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Stromtank S2500の私的レビュー:ブラックアウトを超えて

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どうやら、
お前を仕留めるためには今のままでは不足らしい。
ゆえに俺にはお前を打ち倒すための絶対破壊の一撃が必要だ。

Fate apocryphaより




Stromtank S2500を導入した。
マイ電柱を立てるかわりに、巨大なオーディオ用の電池を使うことにしたのである。
いつかは買うつもりだったが、
伸ばし伸ばしにしていても仕方がないし、
消費税もそのうち上がるらしいので思い切った。
これまで色々と電源関係の機材を試したり買ったりしてきたけれど、Stromtank に出会うまでは、フルテックの一口コンセントを壁コンにして、そこからJormaの電源ケーブルで直にChikumaかORBのタップをつないで、それらから給電する方法が私にとっては常に一番好ましかった。(それにしても一口コンセントの威力ってありますね。)
それまで試した他の機材や方式はシステム全体での音のスピードや力強さ、スタミナなど、どれもどこかに問題を抱えていた。そもそも壁コンに至るまでの配線がオーディオ用ではないし、配電盤もマンションだと変えられない。何をやっても限定的だろう。
それでも試した。
AC社やK社、P社のクリーン電源、N社の巨大なトランス、I社のこれまた大きなフィルター、G社の電源装置、AS社のピカピカのフィルター(これフィルターなんですよね)など、汎用電源装置としては随分と大掛かりなものたちが思い出に残っているが、ここに鎮座するStromtank S2500はそれらよりさらに大袈裟な機材である。なにしろ61kgもある。
こんな電源をヘッドホンのために導入したと言ったら笑われるだろうか。
もちろんスピーカーシステムのパワーアンプ以外の部分にも使えるのだが、
私の今のメインは当然ヘッドホンである。
このブログも最近はヘッドホン専業のような感じだから、
今回はそこにフォーカスして書いていこうと思う。
ベルリン生まれのStromtank S2500を自分の部屋、ヘッドホンシステムの間近に置いてみると、この存在感、いわゆる半端ないというやつである。このイルミネーションの怪しさも極まっている。こういうヒステリックなグリーンやブルーは確かにドイツ人の感性の中では不自然でなく収まるのだろうが、日本人である私にはどうも派手すぎる。だがウラでは、こういうエキゾチックな刺戟が好きなのもまた日本人の特徴なのかも。
余っていたTAOCのボードにちょうどよい大きさのものがあったので、そいつに無造作に乗っけたうえで、家具スベールを使って所定の位置にもって行った。
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次は待ちに待った儀式である。リアパネルにはスイッチキーの鍵穴がある。これにオーナーだけに渡される小さな鍵を差し込んで回すとロックが開放され、電源投入可能な状態となる。このキーを回す儀式をしないと、電源スイッチを入れてもなにも起こらない。
こういう過程を経て起動するオーディオ機材を初めて自分のものとして使った。
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さて、ここで私の使うメインのヘッドホンシステムの概要をおさらいしておきたい。
何故かというと、このあと、巨大でインテリジェントな電池であるStromtank S2500にこのヘッドホンシステム全体をつないで、どれくらいの間もつのか、つまり電池の持ちはどれくらいかという話をするつもりだからである。私のヘッドホンシステムの実物は、電源以外はそれほど大袈裟なものではなく、シンプルなものであり、据え置きのヘッドホンシステムとしては標準的な規模だと思う。

ノートパソコン:VAIO,Macbook Lenovo
(Jriverあるいはaudirvana最新バージョン、オーディオボードはMistral EVA)

Pionner Dressing APS-DR002+APS-DR003
(これをかませたうえで、品質のよいUSBケーブル、優れたDACを使えばJriverでもハイエンドなネットワークプレーヤーを超える音が比較的簡単に出せる。不具合もより少ないし、シンプルなのでトラブルのリカバーも容易である。私は手軽な方式が好きだ)

Orpheus Khole USB(1.5m、比較試聴で1mよりも音が良いような気がしたので1.5m)

Nagra HD DAC
(電源はDA変換部、アナログ出力部で完全に別なコンセントを必要とするため、コンセントは2口必要。オーディオボードはillungo grandezzaCDP)

Dmaa製特注XLRケーブル(ここは0.6mです。ここはあえて短い方が音はいい)

Re Leaf E1x(オーディオボードはilungo grandezzaCDP、フットは四つ足でダイヤモンドコートした無垢のチタン合金)

Brise audio UPG001HP Ref.の3pin XLR×2

Final D8000改(fo.Qにより制振しモディファイ)
(場合によりHD800s,HD820,MDR-Z1R,HD800S,ATH-ADX5000なども使用)

リスニングチェアはYチェア(ハンスJウェグナー)あるいはFj01(フィンユール)
(ヘッドホンリスニングではリスニングチェアは重要。私はヘッドレストがないタイプが好きだ。頭を動かしたときヘッドホンのハウジングがヘッドレストに当たるのが嫌だし、ヘッドレストがついていると、そのまま寝てしまう可能性がある。オフィスで使われるアーロンチェアやゲーミングチェア、エコーネスなども悪くないが、デンマークの椅子は普遍的でくつろいだデザインや適切な硬さのある座り心地が素晴らしく、リスニングに対する集中力とともにイマジネーションを高めてくれる)
以上に対してStromtank S2500より3本のJorma AC LANDA(RHあるいはSG,CUが混在)を通して給電する。なお、PCにもS2500から給電することにした。
こうすることで、家の電源から完全に独立した系となり、後で述べる目論見が現実化するからである。

上記が私の現在構築できる自分にとって最も音の良いヘッドホンシステムである。
S2500にはChikumaやORBのタップもつないだので、コンセントはまだまだ余っている。あと少なくとも二つはコンプリートなシステムを作れるが、そっちはまだ断片的にしかそろっていない。
送り出しのパソコンについては、なにか適切なネットワークトランスポートなどに変えたいような気もしていて、実際いくつも試聴しているが、一つとして心からしっくりくるものがない。どれもまず機能的に完璧なものではなく、それ以上にハイエンドオーディオの意味をよくわかっていない、センスの悪い製品も多いと思う。
例外として以前、試聴したRoon nucleusは良かったが、あれは単体の良さではなくハブの品質やLANケーブルのクォリティと深い関連があるようである。さらにROONがどれくらいこの姿で続くのかもよくわからない。それからそもそも、ROONはいいとは思ったが音に感動まではしたことがない。もう少しよく観察したい。
これに関しては、ヨーロッパのオーディオエンジニアたちが独自に開発したハイセンスなハードウェアがもっと多く出てきて比較検討できるようになるまではダメじゃないだろうか。ここ数年はROONやTIDALなどインターナショナルなソフトウェアやストリーミング、MQAなどの合理性を追求したファイル形式、LANを使用する新たな伝送形式などソフトウェア的な部分では様々な提案が矢継ぎ早だが、肝腎のハードウェアや音楽レーベルの対応が遅れているし、また対応があっても小規模で持続性もない。この界隈の動向が定まり成熟するにはまだまだ時間が必要だと思うので、とりあえずは様子見でよい。
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Stromtank S2500の使い勝手は一度置き場所さえ定めてしまえば、大変ラクである。
リスニングに入っていない時は、フロントの左にあるボタンを押して中央のメーターの照明をブルーにしておく。このモードでは電池が満タンでなければ壁コンセントより充電しつつ、そこからの電気がS2500につながれている電源ケーブルに流れている状態である。
つまり充電作業と単純な電源タップの役割を兼ねている。実はこのモードでもかなり高度な電源タップと比べて遜色ない音が出る。
さてリスニングに入ろうとなる。そこでフロントの左にあるボタンをもう一回押すと中央のメーターの照明がいきなり派手なグリーンに変わり、メーターの文字盤に星のような光跡が浮かび上がる。なおこの派手な照明は右下のボタンで消すことが出来る。
また例えばメーターがブルーの状態で音出ししていて、いきなりグリーンに切り替えることもできるし、その逆もできる。そして、この切り替え時にもほぼ音に継ぎ目や空白が生じない。ここも優れた点だと思う。
肝心のメーターがグリーンになってからの出音については後で詳しく述べるが、一言で言えば素晴らしい音であり陶然とさせられる。
中央のメーターは左に振れている場合は現在流している電流の値を示し、右に振れているときは今充電で流れ込んでいる電流の値を示す。
つまり多くの機材をつないで消費量が多い場合は大きく左に振れ、その後で、そこで使っただけ充電しようとすると大きく右に振れるということである。
さらに重要な情報と思われる電源の残量は、メーターの下に横に並んでいるドットバーの長さで表現される。恐らく、バーのドット一つ一つが内蔵されているバッテリーの区画(セル)を反映しているのだろう。S2500は満タン状態で私の部屋に到着していたので電源を入れると10個のドットが全てグリーンに光っていた。いわゆるオールグリーンである。
その下にある小さな赤ランプは最後まで電池を使い切り、緊急に電源しなくてはならない場合に光るものらしい。そういう状況になるとStromtank S2500は自動的に充電を開始する。この時はブザーが一声鳴るが、やはり音は途切れない。つまり基本的にユーザーは充電と放電を好きに選んでいるだけでよく、とてもラクなのである。これは私のヘッドホンシステムで使うかぎりは、ほぼ発熱しないし、そのAC出力を自身の充電用のAC入力につなぐなどというあからさまな暴挙を除き、禁忌事項もほぼない。

上記のヘッドホンシステムを24時間びっしりと、やや大き目の音量でドライブしてみたが、ドットは3個減っただけだった。つまり24時間で三分の一ほどしか容量を使わなかったことになり、3日近くはつけっぱなしでも、よい音で鳴っている計算になる。また使い切っても自動的にブルーのモード、すなわち充電しながら音出しするモードに途切れなく自動的に切り替わるのだから問題ない。ちなみに中央のメーターはドライブ中に1Aを常に指しており、そこから動く気配はなかった。

このStromtankはあらゆる機材を真名開放させる特殊な宝具と喩えることができる。言わば宝具のため宝具である
この巨大なバッテリーがもたらすのは根本的な音の変化であるが、機材の持つ潜在能力が出し切られていることによるものらしい気配が強く感じられる。それはなにか新しい要素が付加されたのではなく、もともとシステムに秘められていた力の解放なのである。
ヘッドホンにおいて時に鳴らし切るという言葉が使われるが、そのワードをここまでやらなければ使ってはならないとしたら、今までの表現は全て間違いだったのかもしれない。

このサウンドには異次元としか表現しようがない部分がある。使い慣れ、いろいろと高価なケーブルやヘッドホンを試してきた、このシステム。これ以上を望むことはなかなか難しいと思っていた、このシステムから、私の知らなかった世界を引き出した能力とは・・・・言葉を失う。
GOLDMUNDのTHA2やRe Leaf E1、あるいはDMP-Z1などの機材を聞いたときにも、出音にはっきりと新しさを感じたが、ここあるサウンドもまた新しい音には違いない。しかし、その新しさはより根本的かつ本来的なものだというところが異なる。
恐らくどんなハイエンドACケーブルを使おうとこの音は出ないと思う。
恐らく他のどんなクリーン電源やフィルタ-、トランスを使おうと出せない音だろう。
もっと根源的なところからサウンドを改め良くすることがS2500のコンセプトなのだから当然だ。

力が有り余るとはこういうことか。
Stromtank S2500によりバッテリードライブされる、
このヘッドホンサウンドの背後には音の力の奔流が常に渦巻いており、
全ての帯域で音圧を上げている。
音のビームが非常に力強く耳に流れこんでくるのは快感。
脳髄の奥まで純なミネラルウォーターを注入されるような強烈な感覚。
蛇口全開というような姑息な表現は似合わず、
滝水の落下と言いたくなるようなイメージである。
S2500は秘められた海洋のごとき音の水量を小出しにせず、惜しみなく投下してくる。
電源系の機材を変えてこれほど力感や音楽のダイナミズムが亢進する現象は初めてである。
今までどんな電源使っても商用電源すなわち壁コンセントからの電源にこの点では敵わなかったのに。
バックコーラスの滑らかさが変わり、よりスムーズな流れとなって鼓膜に滲みる。
音楽を押し流してゆくエネルギーの大きさがこれまでとは明らかに異なるからだ。
このパワーのお蔭で音はどの帯域においても均等に伸びやかになってゆく。
ヘッドホンをとっかえひっかえしながら、
へえ、こんなにこのヘッドホンは歌えるのかと感嘆。
特に低域の伸びがさらなる高みへと向かっているのが目立つが、
高域、中域に意識を向ければ、これ同様であることが分かる。
ここでのD8000は、限界を試すような低い音を、これまでありえなかった解像度と量感を両立させながら放射させる。中域の濃密さと透明感、高域の確固とした存在感と余韻のたなびき、全帯域に及ぶ鮮やかな色彩感なども美辞麗句で語るのは易いが、今ここにある本物の音の前では空しい。
オーディオは聞くものであり語るものではないというのか。
書く男である万策堂は苦笑いする。

またディストーションが凄く少なくなるのも特筆できる。
音に正確さや自然さが非常に高い度合いで感じられるようになる。
これほど強い音なのだから、自然なものというよりは人工性を感じるべきなのかもしれないが、むしろ、もともと音はこのような強い存在であって、こちらが本来の音の姿、エネルギーレベルなのだと逆に納得させられる。この機材から給電することによって生まれる、音の歪みの少なさがそういう説得力を生む。
時に感じていた機材固有の音のクセがほとんど意識できなくなっているのも見事だ。
つまり今まで機材の出音のクセとして感じていた部分が実は最適化された電源を与えられていなかったことによるものだとわかる。

S2500を使うことで新しい音をさらに発見できるのはいうまでもない。
これはこのDACとアンプのペアで可能な、極限に近いSN良さが成せる技だ。
音場も、音そのものも、途轍もなく純粋となり、ボーカルの生の息遣いや楽器への微妙なタッチがより深く掘り起こされる。これはバッテリー電源の特徴であり、ジェフロウランドのアンプやDMP-Z1で聞かれる音の特徴でもある。
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D8000とRe leaf E1のコンビはこの部分の能力に長けていたが、さらに腕を上げている。また音楽全体の作り方を俯瞰的に見せる意味でも発展がある。こんな音作りをしていたんだと気づく頻度が明らかに増える。そこに意識を向けさえすれば、音に施した加工の質や量が瞬間的に聞き取れる。

S2500の影響下、D8000で聞くヘッドホンサウンドはさらにスケールアップし、疑似的にだが音は左右の広がりを越えて上下にも拡がる。非常にスペイシーなサウンドであり、その広大な景色に素直に感動する。また音にボディがタップリついてくるのも驚きである、複雑な音の色彩や質感、香りのようなものが音の内部に詰まっているとき、そこから生じる音の密度や重みあるいは軽みを私は音のボディとして感じるが、この音のボディを常に意識させるという意味でも、この装置の音質改善は目覚ましいものがある。

さらに音の安定感、スタビリティがとても高い。これもいままで壁コンセントに各種の電源装置が負けていた部分だが、このような盤石さこそはマイ電柱でなければ得られなかったものだ。
また、様々な音楽を聞いているうちには、ヤマトの波動砲や悟空の元気玉に喩えられるような必殺技めいたエネルギーを、音楽がオーディオ装置に要求する瞬間があるものだが、Stromtankを使うと、短い瞬間にそういうサウンドエネルギーを安定して連射できるようになる。電源の余裕・余力がとても大きいためだろう。

この機材に欠点があるとしたら、電源としてはやや巨大であること、高価であること、そして登場したばかりの機材なので長期にわたって安定して稼働するのかどうか誰も知らないことなどだろうか。先々どうなるか分からないものにカネを投入するのは、私の得意技だ。私のような向こう見ずが居なければ世の中はつまらない。
またスピーカーシステム全体をStromtankでカバーしたいと思うとS2500ではおそらく足りない。パワーアンプのためにStromtank S5000が必要となる。S2500はパワーアンプより前の段にのみ給電するのが安全である。ヘッドホンシステムに対して、これは贅沢な選択かもしれないが、本当にハイエンドなスピーカーシステムに対しては容量が足りない。

ところで、マイ電柱とこれとどちらが良いかという問題について。
マイ電柱の問題はマンションだといくら高級でも使えず、持ち家でなきゃならないとかいうことの他に、アースをよほど深く埋めないと効果が低いという話もある。アースをそこまでやって配電盤も屋内配線もオーディオ用としないと完全ではないから、もしかするとトータルではS2500を超える金額かもしれない。また電柱は引っ越しできないが、Stromtankなら可能である。
そして、やるだけやり切ったマイ電柱システムでもまだ問題は残る。
笑い話じゃなく悩んでる人がいた。マイ電柱を立てたとしても、発電所から電柱までのラインは音質対策はされてないという事実をどう考えるかと。
こんな悩みや苦労があるならかなり高価でも自分専用のオーディオ用バッテリー電源を置くのが近道ではないか。現代的ではないか。私はそう考えた。
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ブラックアウト。
これはいい言葉ではない。
だが、そういう停電状態は起こりうることであり、
皮肉なことにオーディオにおいては理想的な環境かもしれない。
なにしろ自分意外にノイズ源は皆無に近いという状況である。
停電対策に使えることを言い訳に買い込んだS2500が来たら、システム全体にそこから通電し、一度は人工的なブラックアウトの中でオーディオを聞く不謹慎を許してもらおう。
私はそう目論んでいたのである。
ある真夜中、私はそれを実行に移した。
グリーンモードのS2500からシステム全体に給電していることを確認し、家のブレーカーを全て落とした。次にD8000を装着、E1xのボリュウムをゆっくりと回した。
聞き始めは期待したほど大きな変化はないかと思った。
音楽の背景の黒さが増している。
これは予想した通りだったが、
楽音自体にはほぼ変化がないようだった。
しかし、音に集中しながら色々なアルバムを試みると
未知の世界が背景の闇の中に開けているのが分かった。
音の背景の質感がアルバムによって如実に違うのは前から知っていた。
無音部分にも質感がある。これは録音に使われた機材の残した指紋のようなものだろう。
しかし、その音の指紋の闇の奥に演奏者以外の人間のものと思われる衣擦れや指を動かす音などの存在音も録音されていたのである。それは考えてみると当たり前にある音なのだが、そこまでは聞こえていなかった。それは闇の中にごく薄く浮き彫りされたレリーフのような音であり、音楽全体の背景に微かに刻まれていた刻印だったのだ。あるアルバムでフェーダーのようなものが滑る微かな音が聞こえたりする。これは幻聴かと疑う。だが、それにしては場の雰囲気とマッチしていてリアルすぎる。NAGRAのメーターも微かに振れている。
こういう音にもならないような音を聞くことはスピーカーでは難しいし、ヘッドホンでもよほど条件が揃わなければダメだろう。そもそもそんな音を聞く意味はないかもしれない。だが掘っても掘っても先があるらしいことを知る、オーディオという趣味の深淵を垣間見るという不思議な満足感はなにものにも代えがたいことは確かだ。

それにしてもブラックアウトでのリスニングは孤独だ。ひたすら孤独な行為だ。
これほど孤立したリスニングは初めてである。
滅亡した世界にただ一人、ヘッドホンシステムとともに取り残され、音楽を聞いているような気分である。この暗闇を占有するのは優越感ではなく寂しさである。こんな侘び寂びの境地までヘッドホンリスニングが、そして私のオーディオが至ったことは我が記憶にとどめていいはずだ。


不謹慎な邪説はこれくらいにして、総括しよう。
Stromtankとはオーディオの力への渇望を満たす最後の仕上げであり、
かつ全てのオーディオ機材の最初に置くべき基盤である。
今まではしっかりしているようで、実はそれほどしっかりしていない土地の上に、大なり小なりのオーディオという建物を立てて悦に入っていたようなものだ。この機材を使っていると自分の長年の間違い、大きな回り道について思いを致さざるをえない。
ヘッドホンのみならず、オーディオにおいて究極のサウンドを求める者はこのバッテリーを避けて通ることはできぬ。
もちろんオーディオには多様な側面があり、Stromtankを使えば全て解決ということはない。だがこれは答えに辿り着くために試さずにはいられないものはずだ。
Stromtankこそ私が求めるオーディオのイデアを仕留めるために必要不可欠な、
絶対の一撃を生みだす原動力となり得るものだったと思う。
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ユーラシア大陸の東の果ての島に棲むハイエンドヘッドファニアたち、
そして今、同じ時代に生き、同じ志を持つオーディオファイルたちよ。
あなた方の召喚した機器は未だその力を発揮してはいない。
それを縛っているものはあなたが使っている電源だ。
当たり前の事実から目をそらしてはならない。
私は、あなた方に
溢れる敬意と僅かながらのユーモアをもって、
このStromtankを捧げよう。


by pansakuu | 2018-10-25 22:02 | オーディオ機器