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TechDas Disc Stabilizerの私的レビュー:ちいさな重石

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この世では、大きいことはできません。ちいさなことを大きな愛でするだけです。
by マザー テレサ (修道女、ノーベル平和賞受賞者)




つまるところ、部外者が取るに足らないと思う、ちいさな事に凝ってしまうのが趣味である。

そういう意味では、レコードスタビライザー(ディスクスタビライザーとも呼ぶが、それではCDの上に載せるものと差別化されないので、ここではこう呼ぶこととする)、つまりレコードのレーベル面の上に置いて、レコードの反りを矯正したり、ノイズを減らす効果のあるウエイト、簡単に言えばシャフトを通す穴の開いた重石(おもし)なのだが、こんなものに凝るというのも、アナログオーディオを趣味とする者として可笑しくはないことだと思っている。
AK240は行方不明、HugoとDSは十数枚のレコードに化けてしまい、今、私はアナログレコード三昧である。終わりの見えないデジタルオーディオに汲々としていた頃と比べれば、これは浮世離れして、お気楽なオーディオライフかもしれぬ。こういう妙な日常においてレコードスタビライザーという、やや変わったアイテムのテストは似つかわしい。

実際、いくつか試してみると、レコードスタビライザーはアナログ再生にとっては、取るに足らないモノとは言い難い場合があることが分かる。それを、ただ載せるだけで、かなり音が変わってしまう場合がある。
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例えば、Beginsという、或るオーディオ店が展開するカーボングッズのラインナップの中に、パルテノンというレコードスタビライザーがある。これは、恐らくオーディオリプラス製と思われる太い水晶の円柱を、カーボンでつくられた二枚の円盤で挟み、さらにカーボン製の円柱でその水晶柱の周りを囲んだものである。異種素材を組み合わせて、異次元の制振効果を得ようという、いわゆるハイブリッドタイプのスタビライザーだ。そこそこ重たいスタビライザーで、掴みにくくはないが、手でつまみ上げる時に指をかけるための部分は特別には設けられてはいない。また、これは純粋な視覚的美しさや手に触れるものとしてのデザインは皆無なモノである。実物をレーベル面に載せても、どうも格好が悪い。それでいて価格の方はなんと16万オーバーで、世界一高いレコードスタビライザーかもしれないのだ。しかし、性能の方は価格相応と言えそうであった。試したスタビライザーではトップの能力、非常に良くノイズを吸うグッズである。アナログらしからぬ静けさが非常に印象的である。これを使うと下手なクリーン電源など真っ青だろうと思うほど、静かになる。ただ、かなり格好悪いし、これでは肝腎の音楽まで痩せてしまうような気がしたのでパスした。私の中では、これはいわゆる効き過ぎ系のグッズに分類される。
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他にもある。オヤイデが作るSTB-HWXというレコードスタビライザーは、パルテノンと形はやや似ているが、価格は対照的にかなり安価だ。でも効果はちゃんとある。これも円盤で円柱を挟んだ形だが、特殊金属製で、持ってみるとかなり重く感じる。レコードの上に落としたら、そのレコードはもうまともに聞けないだろう。そして、パルテノンと同じくデザインがあまりなく、持つ部分も特設されていない。これを載せるとノイズがやや減少し、音が明瞭化、僅かに華やかでシャープな音に変化する。値段を考えると明らかに悪くないスタビライザーであるが、表面的な音の良さに傾いて音の深みみたいなものが感じられず私の中では少し物足りないため却下である。

こうして、いろいろと実物を見て体験してゆくと分かってくることがある。
つまり、一口にレコードスタビライザーと言っても、いくつかの側面があり、それらが統合されて一つの道具として成り立っているということである。
1つは掴みやすさである。このグッズはどうしてもレコードの上を通るので、手から滑り落ちにくいものがいい。スタビライザーよりもはるかに高価な盤の上に、それを落としてしまったら、取り返しのつかないことになる。
次に適度な重さと適度な広さの接地面が必要である。若干あるレコードの反りをウェイトをかけて修正する効果がスタビライザーには期待されるからだ。また、僅かに起こりうる、再生中の盤のスリップを防ぐ意味もある。
さらにスタビライザー本体、あるいはレーベルに接地する面の材質に微振動や静電気を吸収する能力もあったほうがよいし、デリケートな紙で出来たレーベル面を傷つけない材質であることが望ましい。
また、スピンドルシャフトを通す孔の入口部の形状も一応チェックすべきだろう。レーベル面に載せる場合、必ずスピンドルシャフトを通すのだが、スタビライザー本体に隠れて、シャフトの位置は見えないので、シャフトが孔を探し当てるまでフラフラとスタビライザーを動かして迷うものだ。これは楽しくない。これについて考えられたスタビライザーでは、孔の入口部のみを少しだけスリ鉢状に開いて加工し、孔を探しやすく、挿し込みやすくしている。
また、スタビライザーの直径と側面の形にはカートリッジとの干渉の問題がある。演奏が終わり、カートリッジが最内周までやってくる時、これらの要素とカートリッジの形の兼ね合いが重要になる。各社のカートリッジは実に様々な幅、形状をしているため、スタビライザーのデザインによっては、干渉が起こる。すなわち下手をすれば、カートリッジの側面がスタビライザーの側面と擦って、耐え難い騒音がスピーカーから出る。もちろん、そうなる前にアームを上げるなり、ボリュウムを絞るなりすればよいのだが、音楽を聞くのに没頭して、そこに手が回らないことが多い。この干渉が、市販のいかなるカートリッジとレコードの組み合わせに対しても起こらないことが、真に十全なスタビライザーの目指すところである。それは、一般にはスタビライザーの直径を小さくさえすればよいのだが、そうすると前記の適度な広さの接地面という条件が成り立たなくなるのが悩ましい。
そして、最後にデザインがある。アナログプレーヤーというものは、オーディオシステム中ではとても目立つものであり、動いているのが目に見える。その中心で回っているものは、ステージの上で回転するバレエのプリマの如く真っ先に目が行くものである。少なくともあまり不恰好なものは望ましくない。
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これらの条件をどれも十分に満たすようなレコードスタビライザーというと、実はなかなかあるものではない。例えば私の使うアナログプレーヤーには、あのスイスの若者が作った純正のレコードスタビライザーが付属している。これは金属製の平べったいもので、指先だけで掴むような形状であり、一度、レコードの上に落としてしまったことがある。またイケダのカートリッジの側面とも干渉しやすく、音以外の点では、あまり良いモノには思えない。ただ、接地面にプラッターの表面に張ってある特殊な材料と同じものが張り込んであるせいか、ノイズが減るとかいう以前に、他のスタビライザーに比して音馴染みがよいというか、載せても、このプレーヤーの音の傾向を変えず、シックリくる感じがある。つまり全くダメなものではないのだが、レコードスタビライザーについての上記のチェックポイントを見てゆくと、総合点はあまり高くない。
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この純正のスタビライザーと似たカタチのモノは日本製にもある。上の写真の山本音響工芸のRS-1や下の写真のFurutechのMonzaである。形は似ているとはいえ、これらの効果は似ていない。RS-1は安価であり、相応の効果しかない。外周部のみで接地するタイプだが、定位がやや安定し、中低域の存在感が僅かに増したようになる。だが大した変化ではなく、こころなしか変わったか、という程度。また、このスタビライザーは指先のみでつまむような感じで持つしかないのも不安である。安いから仕方ないのか?こういうモノは好きじゃない。
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対するMonzaは気合いが入っている。底面には特殊な同心円状の模様のあるゴムのような材質が貼られている。本体にも細かい等高線のような模様が刻まれている、持ち手の所にはカーボンを巻いている。孔もやや大き目になっていて差し込みやすい。手数があるスタビライザーだ。音も変わる。パルテノンほどではないが、音の背景の静けさがはっきり深くなる。底面の同心円が静電気を放散するとか書かれていたが、その効果か。静けさの深さゆえに、音が浮き彫りにされて際立ってくる。これは導入した効果がはっきりある。また盤上でキラキラ光りながら回るMonzaはなかなか美しく、これは総合点が高いモノである。しかし、欠点もある。直径がやや大きいのでカートリッジと干渉することが、まれにあるのだ。また、つまむ部分がやや低く、しっかり掴みにくい。そして、やはり音に深みが足りなくなる。なんだか、音はいいのだが、それだけというか、上滑りな印象だ。これは、やはり完全ではないと思われたので返却する。
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他にもいくつか、中古や新品で買ったり、借りたりして実際に聞いてみたのだが、レビューしようと思うほど、良いモノが案外と少なかった。こんなことを言ってはナンだが、無駄が多い試行錯誤であったかもしれない。結局、最後に残ったのは以下の二つで、最後の一つを採用した。
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また、私がすでにインシュレーターを導入しているHRSというアメリカのメーカーも、レコードスタビライザーを製作している。HRS Analog Diskという製品である。これは削り出しのハイグレードなアルミの円柱の中身を刳り貫き、精密に加工されたゴムのような特殊な材質を嵌め込んだものである。実物の指に当たる面は他より広い方でいいと思うが、実際触ってみるとツルツルしていて、肌に馴染まず、かなり掴みやすいというところまで行っていない。ただし、それほど重くないので、掴んでいて不安は少ない。接地面は広く、特殊なゴム状材質が面をしっとりと押さえる形で、ノイズの吸収効果も高そうだった。形と色はやや地味だが、精悍さがあり格好は悪くない。実際にレコードに載せて音を聞いてみると、第一印象はMonzaとRS-1の中間にあるような音である。すなわち、静寂さと音の安定感が同時に増加する。静寂さはMonzaの方が、より深いようだが、音の重心が下がり、安定感が増す効果はMonzaよりも上だと思う。それでいて、聴き込むと音は重苦しさがなく、軽みがあり、清々しいトーンがあることも分かる。これはとてもいいモノだと思い、これにしとこうかなと一時考えていたが、やはりまだレコードによってはカートリッジと干渉する場合があるのと、次に試したモノが自分の求めるレコードスタビライザーの姿をほぼ完璧に具現化していたので、競り負けてしまった。現在はメモを押さえる文鎮として活躍している。
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さて、最後にレコードスタビライザーについての私のファイナルアンサーを紹介しよう。
Air Force ONEを開発したTechDasは、その開発技術から派生したいくつかの製品を発表しているが、その中の一つにレコードスタビライザー、TechDas Disc Stabilizerがある。Air Force ONEはシステムコンセプトとして、スタビライザーを殊更に必要としないプレーヤーだが、音の最後の仕上げとして納得いくようなスタビライザーを造ろうとしたらしい。
このTechDas Disc Stabilizerはまず少し背が高い。なぜかというと指でもつ部分が長く取られているからだ。指先全体が馴染むような浅い窪みが全周を囲んでいる。こういう部分があるスタビライザーは試したのものにはなかった。表面加工も適度にザラザラしていてますます指馴染みが良い。結構な重さがあるが、重すぎず軽すぎずというやつで丁度いい。
それから直径がやや小さいのも特徴だ。レコードの反りを抑えることのできる、ギリギリの直径なのだろう。なぜギリギリまで小さくしたのか、それはカートリッジが最内周に来ると分かる。カートリッジの側面とスタビライザーの側面が、私の試したかぎり、どんなレコードでも、一度も擦れないのである。手持ちのカートリッジのどれとも全く干渉しない、はじめてのスタビライザーがこの製品であった。さぞや設計者はアナログオーディオを深く知る人なのだろう。
また、このルックスもいい。この艶消しの黒の表面処理は指先に馴染むし、精密感もある。だが、これは金属素材の表面を超硬質アルマイトで処理、さらにその上に制振効果のある塗料を吹き付けてコートした結果であり、極めて理詰めの仕上げなのだ。美しさは、しばしば意外なところに生まれるものらしい。ドイツのピカピカ系のプレーヤーとこの黒色は合わないかもしれないが、全体の形や色、質感は、とりあえず私のプレーヤーと良く合う。
また全体の形にもシンプルな美しさを感じる。本体の材質は振動吸収性の高い特殊な金属であり、振動吸収に最適な形状をコンピューターシュミレーションで得たとのこと。こういう事を行って設計されたことを謳うスタビライザーは珍しい。
接地面にはいままで見たことの無い不思議な材料が貼られている。表面はサラサラした感触のフィルムのようなものだが、押すと微かにへこんで、ゆっくりと元の平坦さに戻る。この手の材料に詳しい人に見せたが、なんだか分からないという返答だった。だが彼曰く、この材料はかなり振動を吸うだろうとのこと。私はレーベル面を決して傷つけないという点を買っていて、制振はスタビライザー本体に使われる特殊な金属や表面処理によるものと思っていたので意外だった。

さて、そのサウンドは?このスタビライザーを置くと、アナログサウンドは悠々とした落ち着きと静かさが感じられる音に変貌する。これはAirForce ONEの音の方向性をパクッていると思う。よく言われるピラミッドバランスのサウンドとも言える。高域は細く高く伸び、低域が深く、解像感豊かに鳴る。定位がしっかりし、静けさが増すので音数も増えるが、それでいて効き過ぎた感じがない。音楽の美味しい部分まで痩せない。大地に根ざしたような余裕と程良い静寂感が釣り合って現れる音である。別の言い方をすればターンテーブルのプラッターが大きく重くなった場合に聞かれる、どっしりしたサウンドなのだが、私が必要とする音の軽みや柔らかさも失われない。確かにHRS Analog Diskよりも、こころなしかヘヴィな方向に音が振れるのだが、これはこれで捨てがたいバランスだと思う。こういう新たなバランス感覚を自分が求めていたのだと、かえって気づかされた。

このTechDas Disc Stabilizerという、ほとんど全く世間には宣伝されていないレコードスタビライザーを数あるスタビライザーのキングにしてしまっていいのかどうかはさておき、これほど良いモノが世間のアナログオーディオマニアに全く知られていない現実は嘆かわしいと私は勝手に想う。だから、私は自分勝手にここに書いているというわけだ。

こうして見てきたレコードスタビライザーなのだが、
アナログオーディオに凝っている人間以外には、ただの奇妙な形をした重石(おもし)、そういうものにしか見えないはずだ。世間一般としては、どこかに落ちている変わった形の、ちいさな石ころに払う関心と、そう変わらない程の気遣いしか、このレコードスタビライザーというモノには与えられないと思う。しかし、そういう人気(ひとけ)のない世界には、逆に面白いものがいくつも転がっていて、だれかが面白がってくれるのを待っているのは覚えておくべきだろう。特にアナログオーディオの世界には、この手の面白さを持つアイテムがやたらとあるのである。

とにかく、部外者が取るに足らないと思う、ちいさな事に凝るのが、趣味の楽しさであると、私は勝手に考えている。だから、この一般的には取るに足らないモノと思われる、レコードスタビライザーをとっかえひっかえしている時に無邪気な喜びを感じる。

人々の関心の隙間にひっそりと置かれているらしい、ちいさな黒い重石を掌(たなごころ)に包んで目を閉じると、ゆっくりと回る漆黒のレコードを中心にして、アーム、カートリッジ、フォノケーブル、フォノイコライザー、スタビライザー等々、数えきれないほどのモノや人そして音楽が、その周りを回っているイメージ、まるで太陽系の惑星のように公転しているイメージが湧いてくる。また、インターネットを使って、全世界的な視点でオーディオを眺めていると、アナログは日本人一般が想像するよりも、はるかに巨大な系であり、デジタルとは別の広大な宇宙を形成するものだと見える。そして、その宇宙の微かだが確かな片鱗を、ちいさな重石に感じることができるのは素敵な事だと思う。私はこの感覚、取るに足らない小さなモノが大きな世界に繋がっているという感覚を失いたくないために、アナログオーディオを、あえてやっているのかもしれない。
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この方向性は間違っていない。
ちいさな重石の重みは、そう私に囁くのである。

by pansakuu | 2014-08-17 23:06 | オーディオ機器