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LUMIN A1で聞くDELA N1Zの私的インプレッション:ゼータの世界


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「何が最善かは分からない。しかし、何ができるかは分かる。」
スター・トレック  イントゥ・ダークネスより



Introduction

高名な数学者ヒルベルトが1900年に第一回の国際数学者会議で提出した、20世紀に解かれるべき23の難問のうち、解かれずに生き残っているものの代表格、それはリーマン予想だろうと思う。ごく簡略に言えば、リーマンゼータ関数の自明でない零点の実部が全て1/2であるという予想だ(と私は思っている)。リーマンによって記載されてから140年以上、解決の糸口すら見いだせぬ、この難問についてこんなところで深入りするなど思いもよらない。ただし、この問題が恐怖を感じるほどに難攻不落であること、部外者には全くチンプンカンプンな問題であること、そして恐らく多くの分野の専門家たちが協力し、新たな視点から解決にあたらないかぎり、決着しないのはもちろん、なんらかの途中成果を得ることさえ極めて困難である事は、現代オーディオの或る問題と共通していると思う。

その問題とは、デジタルファイル再生における最善の音質とはどのようなシステムにおいて得られるのか、ということである。
デジタルファイルを使用するオーディオの形式は、PCとDACをUSB等でつないで音を出すものと、NASとネットワークプレイヤーをネットワークを介してつないで音を出すものに大別されると思うが、それぞれ、かなり多くの要素が絡み合い、複雑な様相を呈している。これらの要素ひとつひとつを吟味し、最善の音質を得られるように巧くセッテイングすることは、大袈裟に言えばリーマン予想を考察しながら解決へ導く無謀さに似ている。そういうわけで、この問いに正しく答えることは、素人の私には煩雑すぎるのはもちろん、この分野に詳しいとされる人々にとっても、遠い将来のことのように見える。つまりハイエンドオーディオとPCの全ての側面を深く総括して見て、効果的に対策できる人が何処にも居ないようなのである。
そういうわけで、私以外の多くのオーディオファイルとパソコンマニアの不断の努力により、デジタルファイル再生の最善の方法、すなわちファイナルアンサーがもっと明確に見えるまで、観客として成り行きを見守ろうというのが私の姿勢である。仮面ライダー鎧武のDJサガラみたいなものだ。

とは言ってみたものの、面白いモノが出てくれば、降りて行って触れたり聞いたりしたくなるものである。DELA N1Zという特殊なNASの実物が目の前に置かれたとき、それを素通りするようなマネはできなかった。ハイエンドなネットワークオーディオに特化したNAS、という触れ込みに随分前から興味をそそられていたのである。そういうわけで今回はN1Zという高価で特殊なNASについて語ってみたい。


Exterior and feeling
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実物は思いのほか小さなものであることに、まず少し驚く。上の写真ではあまりはっきりしないが、実際に隣にSSDでなくHDDを搭載する下位モデルのN1Aを並べると、N1Zはより小型の機器である。下位モデルより上位モデルが小さいというのは、この界隈ではよくあることではない。これはSSDがHDDよりも小さいということ、そして製品の横幅をKLIMAX DSの横幅に合わせたということらしい。(したがってN1Zの横幅は今日聞くLUMINの横幅ともほぼピッタリと一致する。)重ねて置くと意外に見栄えは良い。スタック使用がいいか悪いかは別にして、こういう大きさの揃え方は嬉しい。
ハイエンドオーディオ機器における視覚的なマッチングも、機材を買う時には背中を押してくれる要素だ。今まであったデジタルファイルオーディオ関連機材にはこのような配慮はなかった。それは製品のメーカー自身がハイエンドオーディオに実は関心なく、本当の自分の仕事はPC周辺機器を製作することだと心の底では思い込んでいたせいだろうか。それでは趣味性の高いオーディオ機器は作れないのである。

また筐体の構造にはオーディオ的な配慮がかなりある。まず、筐体の側面や上面を構成するアルミの部材の厚さは、今までのNASには全く期待できなかったレベルのものである。天板、側板の厚さは5mmある。こういう部材をトルク管理されたネジで留めて組むことで、一つの筐体を作っている。中は4室に分かれており、上から見てH型に仕切られている。この仕切り方も筐体構造をより強固にし、各部屋どうしの電気的干渉を避ける工夫らしい。N1Zの場合、筐体を指で弾いたときの反動や音が下位モデルのN1Aよりも明らかにソリッドだ。
N1zでは電源部は2個あるようで、LAN関係に供給するものとUSB/SSDに供給するものを別にしている。この電源はコンデンサーバンクを備え、さらに長期にわたる安定性を考慮した高精度な電圧制御システムを通して供給されるという。いままでNASの電源を自作する人はいたが、このような分離電源を作れた方はいなかったと思う。もちろんファンレスであり、筐体は密閉されている。そもそもSSDを採用し、電源もスイッチング電源であるから、発熱がほとんどない。
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実装されるSSDは、2個で合計約1TBになる。これらはオーディオ用に特別に開発されたものだとされるが、その中身は見ても分からない。聞いてみないとその成果は不明だ。スーパーキャパシターの実装により不意の電源切断にも対応するとの話だが、これもその時になってみないとなんとも言えない。それらの話はともかく、このSSDをマウントするのにサブフレームを設け制振ゴムを介するとは。こういうメカニカルグラウンディングの手法も、かなりオーディオの世界に影響されたものと見る。内蔵されるクロックもハイグレードなものというが、こういう謳い文句のあるNASは経験がない。音に効くのか?

フロントパネルにはPCやタブレットがなくても基本操作を完結するための日本語表示のディスプレイと、いくつかのプッシュボタンがある。このような操作系自体、NASについているのを見たことがない。これがある理由はリアパネルを見ると分かるのだが、それは後ほど。
ところで、これらのボタンを適当に押して設定を確認していると、“電源切り忘れ防止”とかいう表示が出て、また少し驚いた。NASというモノは24時間稼働させているものだと思っていた。立ち上げ、立ち下げに数分がかかるし、頻繁にON/OFFをすると調子が悪くなりそうな気配がある機械である。しかし、あんなことをしていたら、それはそれで電源がイカれるのが早くなりそうだし、不意に停電したらどうなるのか、心配はあった。
今回、テストしているN1Zは異例に立ち上がりが早い。測ってみると常に20秒以内で立ち上がる。これで実際に不具合なく安定動作してさえいれば、音を聞かない時は電源を切っておいてもよいだろう。
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N1Zのリアパネルに回ると驚くような端子がある。“LAN”と書いてある端子、すなわちハブにつなぐ端子の隣に“PLAYER”という別な端子がある。これはDSやLUMIN A1、DSP-03などのネットワークオーディオプレイヤーのLAN端子に直接つながる端子である。こいつを使えばハブを介さず信号を直接プレイヤーに送り込めることになる。このときはハブにつながるLANケーブルを外しても音楽が聞けるが、すると当然PCやタブレットから操作はできなくなる。そのためにフロントパネルの操作系があるらしいのである。このいわゆる“ダイレクト接続”の音質こそ私が聞きたかったものである。なお、このLAN接続端子も特殊で、シールドの外側に通信状況確認用のLEDを配し、ライトパイプを用いて筐体外部へ光を導くようにしている。こういう手の込んだことをして、LEDからのノイズの混入を防ぐという。
付け加えるならN1Zのリアパネルにはアースがあり、電源ノイズフィルターを装備したACインレットがあることも驚き。NASとしてはかなり珍しいのではないか。こうなると電源ケーブルを選択したり、アースの取り方を工夫したりと使いこなしにバリエーションが生じることになるだろう。これもオーディオ的な思考が影響している。

なお、N1Zは四足の機材である。下位のN1Aと共通の硬い木材と鋳鉄を組み合わせたオリジナルのインシュレーターが採用されている。このような音質対策パーツが初めからNASについていたという記憶がない。

このN1Zは、PC関連機器で有名なバッファローから派生したブランド、DELAで製造されているので、その出自からPC関連機器と考えられるが、できあがったモノには完全にハイエンドオーディオの手法が用いられている。下衆の勘繰りに過ぎないのかもしれないが、これはオーディオ機器メーカーからの入れ知恵があったとしか思えない。外側から内部までハイエンドオーディオの方法論で作られたNASはピュアオーディオ界からの助言なしには開発できないような気がする。

それにしても、LAN接続端子をはじめとして、ここに選定された部品はコンシュマーのPC機器としては特殊すぎる。1TBのNASと考えると部品点数の多さも異常である。その観点から言えばN1Zは形式上はPC周辺機器の皮をかぶっているが、完全にハイエンドオーディオの機材のようである。一般的なPC機材と考えるとあまりにも仰々しく、バカバカしいほど高価であることは間違いない。そういう位置づけでは売れるはずのない機械である。しかし、これをハイエンドオーディオの世界の機材と考えると特に高価とは言えない。ここは1mのインターコネクトケーブルでもN1Zより高価なものがいくつもある世界である。このNASを見る者は視点を変えるべきだ。安い高いは視点を変えてから考えなくては。
ただし、N1Zが、その世界のモノと認知されるには、もって生まれた高音質で、その身の証を立てなくてはならない。それを忘れてもらっては困る。
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LUMIN A1について:
ここで試聴に使うネットワークオーディオプレーヤーLUMIN A1について簡単に紹介しておこう。以前から試聴していた、このプレーヤーはLINN KLIMAX DS/Kを強く意識して開発された機材である。大きさやデザイン、内部の部品、ソフトウェアの使い勝手に至るまでLINNのDSと共通する部分が沢山ある。例えば、KLIMAX DS/Kにおいて悪名高い、あのリアパネルの上に張り出すヒサシのような部分まで同じく存在する。(こんな所まで似せなくてもいいんじゃない?)
だが、いくつかの点で異なる。
 その1:電源部が分離した別筐体にありON/OFFはそこで行う。ここにはヒサシはないので、どのような電源ケーブルでも挿せる。これはDSよりも賢い。
 その2:大雑把にはデザインも筐体の寸法もほぼ同じだが、表面がヘアライン仕上げで、底板はKLIMAXのような立体的な形状ではない。足も材質等は似ているが少し安っぽい。フロントのデザインはカーブを描いていたり、表示窓が奥まっていたりしてやや異なるが、LUMIN A1の方が日本語表記は見やすいように思う。
 その3:デジタル出力が可能。デジタル接続でDevialetとつないで試聴したこともあるが、かなりマッチングが良かった。
 その4:操作するソフトウェアはkinskyとkonfigのように分かれておらず、一つで済むし、一言で言って使い勝手はかなり良い。全体的にはLINNのkinskyに全然負けない。ただSong castのようなYouTube、iTunes、CDドライバー経由のCD再生などを扱う機能は今の所ないらしい。私はYouTubeをDS経由でよく聞くのでここが一番痛い。なおLUMIN A1はkinskyからでも操作可能。
 その5:ほとんどのファイル形式のハイレゾはもちろん、DSDに対応する。無論、ギャップレス再生可能。
 その6:音質はAkurate DS/Kと同等か、わずかに上といったところ。この音はKLIMAX DS/Kのような、この分野のパイオニアとして独自の世界観を持てるレベルにまでは至っていない。これだと外観含めてKLIMAX DSの劣化コピーと揶揄されかねないところだが、電源等の細かい部分でDSとは違いを出し、それを巧妙に避けている。LUMIN A1の出音はAkurateよりも明らかに輪郭がはっきりして実体感が増した音。より躍動感もあるようであり、低域の解像度にも若干の優位を感じることがある。もちろんこれはアナログ出力の音であり、デジタル出力で相応のDACと組めばさらに上が狙える拡張性がある。
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他のメーカーのプレーヤーやトランスポートとシンプルに比較した印象としては、LUMIN A1のアナログ出力の音質はDSP-03にはコストパフォーマンス含めてやや劣るが、MAN301には勝るように思う。このジャンルの機材ではDSP-03がクロックも入るし、総合的に最も良くできているように見えるのだが、実はDSやLUMIN A1、MAN301と比較してアプリの使い勝手が悪いことが最大の難点かもしれない。これが駄目だと買う気にならない。(なおA1の出音は、最近聞いたAurender W20にTAD D600のDACをつないだ音には及ばなかった。Aurender W20はつなぐDAC次第である。MAN301についてはトランスポートとして使って、MEDEA+OP1-BPをかませるのが本来の使い方だろう。)
以上、LUMIN A1についてごく簡単に述べたが、LUMIN A1のレビューは秋田県在住の方のブログが大変詳しい。興味がある方はそちらにあたっていただきたい。


The sound 
今回は、メーカー名を挙げられないごく普通の市販のHDDを使ったNASと、やや剛性の低い筐体とHDDを使う下位モデルDELA N1A、そしてN1Zを同じシステム、同じ曲で同時に比較試聴している。DSDも聞いたが、これは音が良すぎて比較に集中できないので、16bit,44.1kHzのリッピングデータを用いた。接続するネットワークプレーヤーはLUMIN A1。

結論から言えば、N1Zによるネットワークプレーヤーへのダイレクト接続の音がズバ抜けている。すなわちハブを使わず、プレーヤーとN1Zとの直接接続での再生を可能にする、専用モードでの音が、明らかに抜きんでており、音質の次元が一つ上がったような印象であった。これを聞いてしまうと、少なくともN1Zでの通常のLANを使った接続でなければ、もうイイ音とは呼べなくなってしまう。N1Aは普通のNASに比べたら、もちろん悪くないが、N1Zには明らかに劣る。何故だろう?違いはSSDと電源、筐体だけなのに。なお、その音質は違いはブラインドでも分かるものであった。(そういえばN1Aのダイレクト接続を試さなかったな、惜しい)なお、普通のNASから来る音となると、さらに随分と残念なものとなり、正直もう比較対象としてさえ聞きたくなくなってしまったほどだ。

N1Zをまず通常のLANを使った接続で試聴して比較する。
出てきた音の透明度と背景の静寂感の高さは、その前に聞いていたN1Aを明らかに上回る。こうなれば、切り替えた普通のNASからの音は、これと比べるとモヤモヤした音だとしか言いようがない。N1Zを使った場合、音ひとつひとつの周囲は本当にクリーンであり、空間内にそれらが整列して気持ち良く定位する。また、その定位にブレがなく音像の安定感が増す。聞いていて目の覚めるような感じである。サウンドステージの見通しも良くなるので、音場もまたわずかに広くなった印象を受ける。しかしダイナミックレンジが拡大したり、帯域ごとのバランスが変わったりすることはない。音のスピード感や温度感にも変化はない。副作用が少ない。
とにかくN1Zを使うと、音全体のフォーカスが良くなり、いままで意識されていなかった音像の細部はもちろん、背景にある微かな音がしっかりと耳に届くところが素晴らしい。
この変化が外付けクロックをデジタルファイルオーディオに導入したときの変化に類似するのは面白い。ではクロックを入れたうえで、N1Zを使うとどうなるのか?興味は尽きない。
N1Aとの音の違いは、端的に言えば音の周囲のクリアネスの度合の違いである。N1Zの方が音像の周囲の空間の透明度の向上がより顕著で、音が際立つ。しかもその際立ち方がいかにもナチュラルなので、音楽に心地よく入って行ける。
今回は自分でタブレットを操作せず、予告なしに同じ曲で次々と機材を入れ替えてもらって聞くというブラインドに近い試聴をやっていたが、これはN1A、こっちはN1Zでしょと比較的簡単に当てられた。ましてや普通のNASとN1Zのブラインドの比較は・・・。その必要があるとは思えなかった。
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さて、いよいよN1Zによるネットワークプレーヤーへのダイレクト接続を試そう。ここでは初めからハブを使わず、いきなりプレーヤーとN1Zの直接接続のみとしてみる。タブレットからはN1Zが見えなくなる。
このサウンドは生々しい。
この接続でのリスニングでは、録音された場で録れたての音源をプレイバックしているような錯覚を覚える。録音された音源があり、それが様々な過程をへて実際にスピーカーから出てくるのだが、その過程にあったわずかな引っ掛かり、遅延のようなもの、ノイズのようなものが一掃されスムーズに音が出てきたようなところがある。この音を聞いていると、信号が通る経路のどこかに我々の知らないボトルネックがあったのだが、それが取り外された、そういう図式が頭に浮かぶ。
このような生々しさは、もとからデジタルファイルの中に隠されていたものなのだろうが、さまざまなノイズがN1Zにより取り除かれるまで、我々にはなかなか聞こえて来なかった。SSDを挿した普通のNASは過去に使っていたが、こんな音ではなかったと思う。普通のHDDを積んだNASに毛の生えた程度の違いだったと記憶している。N1Zはあの音よりは、かなり高級な音を出せる機材と思われる。

例えば、プロオーディオの機材にありがちな事だが、こういう生々しさが発揮された音では、音がダイレクト過ぎて乱暴に聞こえることがある。しかしN1Zでは、その種の聞きづらさは感じなかった。ここではコンシュマー的な聞きやすさはしっかりと守られているようだ。音全体の品位が高いとでも言おうか、十分にダイレクトな音でありながら暴力的な印象がない。
ノイズが一掃された音場の中では、背景に広がる暗騒音の細かな襞の状況が自分の手のひらにある細かな溝のようにじっくりと観察できる。そして、それぞれの楽音の質感、音の重なりと分離の仕方、音色の濃淡、音の輪郭と周囲の空間の馴染み方のバリエーションがN1Zの通常の接続時と比較して豊富に聞こえ、千変万化する音楽の様相を詳しく見届けることもできる。
これは全体にクールな傍観者に徹する音という感じでもあり、音楽の抑揚を効果的に演出するような音に変化する気配がない。フラットでクリアな音を極めていくような方向性である。このような態度は楽曲のジャンルを選ばないだろうから、クラシックだろうとアニソンだろうと、録音の良し悪しに関係なくメリットを享受できよう。
結局、こういう音の姿勢がN1Zの音質の真骨頂であり、N1Z独自の世界なのだと思う。NASによってこれほどの音質が実現したことはなかった。これはDACに高精度なクロックの信号を入れた変化に、またしてもよく似ているのだが、この接続では、かなり高価なクロックを入れた状態に肉薄するような音の良さが得られる。実際、そういうクロックは80万では買えないかもしれないし、だいたいネットワークプレーヤーで外部クロックを受けるものが少ない現状では、N1Zによる類似の音質向上には十分な魅力があると思われる。

こうして聞いてきて、今回はあまりトラブルらしいトラブルはなかったものの、実際に導入するとどうだろうか?これまでは、お店では上手く動いていても、自分のリビングではスタックしまくって、場合によってはリタイアしそうになったデジタルファイル関係のソフトウェアや機材は少なくなかった。これも実物を実際に使ってみると苦労がないなんてことはないのかもしれない。ただ、そう考えても、この音質にして実売73万円は必ずしも高くないと思う。もっと割高な機材はいろいろあるから。もちろん、ハイエンドオーディオの機材と考えての話だが。


Summary

素数という謎めいた存在についてある程度以上深い知識を持つこと、それはリーマン予想の困難さを知ることにつながる。
また、それはデジタルファイルオーディオについての知見が深まるにつれて、最善のデジタルファイル再生とはどのようなものかという問題に突き当たるのに似ている。
とはいえ逆に言えば、この問題が意識され始めたということは、そろそろ手仕舞いの予感というか、デジタルファイルオーディオのファイナルアンサーが見えてきそうな気分が漂ってきたということなのかもしれない。こうしてN1Zから音を聞いていると、そういう希望的な観測もしたくなる。だが、実はコトはそんなに甘くはないのかもしれない。
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それというのも、過去にも高級なオーディオ用のNASやPCというものがネットワークオーディオプレーヤー向けに発売されていたのに、その話題は全然盛り上がらなかったということだ。HUSHのケースを使ったもの、Rip NAS StatementやZIGSOWのZSS-1、あるいはCerton systems Integrita・・・。それらはリッピング機能がついていたりRAIDが採用されていたりと特徴はあったものの、いつのまにか消えたり、発売中でもそれほど話題に上らないモノたちである。
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NASというモノは基本的にはPC関連機器であり、その分野の進歩のスピードが、これらの機材をアッと言う間に陳腐化させてしまうところがあるし、実機のデモがほとんどないので本当に音が良いのか、コストパフォーマンスがよいのかどうかわからず購入に踏み切れない、すなわち売れないということもある。これらの事情から、高級なオーディオ用のNASというものはネットワークオーディオに定着しにくいのであろう。
ここで私がDELAに要望するのは、N1Zを一過性のものにしてもらいたくないということだ。このN1Zあるいはその改良機を長い期間にわたり、LINNがDSでやっていたような出張試聴サービスやアフターサービスをしながら作り続けてほしい。そうしなければ折角作り上げた、立派な音質のスタンダードは、意外に早く忘れ去られてしまうかもしれない。(そのためには、もちろん私たちオーディオファイルがこれを盛んに購入するということが必要だろうが・・・。)

また、このN1Zによるネットワークプレーヤーへのダイレクト接続、すなわちハブを介さず、プレーヤーとN1Zのダイレクトな接続だけで再生可能にする、専用モードというものは、外部クロック入力とともにネットワークオーディオの高音質化に大きく貢献するもののように思えるのに、なかなか実践されにくいだろう。もちろん音質の点から言えば、このモードは大いに活用すべきだ。しかし、これだと接続の仕方によっては、PCやタブレットからの操作が事実上できなくなり、利便性、つまり敢えてデジタルファイルを使う意義の一端が大きく損なわれることを無視できない。また、この接続モードでの音質の優位性が、ネットワークオーディオの音質はネットワークを敢えて介さないことで良くなるという可能性を示したことも見逃せない。ここにネットワークオーディオの矛盾が露呈してしまっていると思うのは誤解だろうか。

このN1Zに“ゼータ”とニックネームを付けた人がいた。このゼータという言葉は最後にくるもの、ファイナルな存在という意味合い持つ。 ここで“ゼータ”が展開した透明な音の世界は、デジタルファイルオーディオの最善の音質とは?という問いのファイナルアンサーの一部であることは、現時点ではほぼ間違いない。あとはゼータが、オーナーの手元で実際にトラブルなく、安定して動作すること、アフターサービスが充実して息長く作り続けられることに期待するしかない。

まるでリーマン予想のように困難な、デジタルファイルオーディオの難問に、今、光が当たり始めている。それが一過性の出来事でないことを祈りながら、そして、まだいくつかありそうな矛盾がスマートに解決されることを期待しながら、私はまたこの果てしない探究の観客、傍観者に戻るとしよう。

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by pansakuu | 2014-04-13 22:41 | オーディオ機器