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HANNL Mera ELB Eco 24V レコードクリーナーの私的レビュー:ヤヌスの顔

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ある程度以上に複雑な物事には、
ほぼ例外なく、Janusの顔のような二面性というものが
影のように付き纏っている。
そういうことを、何をやるにしても常に忘れないことである。
桐村 純 (発明家)



Introduction

最近、あまり聞かなくなりましたが、電線病という業界用語がありますよね。
要するにオーディオ用のケーブルをとっかえひっかえして、音が変わったことを喜ぶという習性、オーディオという趣味の中の一つの態度を指す言葉だと私は解釈しています。
病気かどうかまでは分からないのですが、私にもそういうことを嬉々としてやっていた時期がありました。あの頃は随分と散財したものです。しかし、アナログオーディオを本格的に再開した折に、オーディオシステムから出てくる音というものの中には、どんな高価なケーブルをもってしても変えられない部分があり、むしろそちらの方が、オーディオという趣味のコアに近いらしいと知ったわけです。ケーブルは電気信号が流れる経路であり、それ自体が、信号を積極的に発生することはない。一方、デジタルオーデイオではCD,SACD,あるいはデータそのもの、アナログオーディオではレコードが音の源泉です。当たり前ですが、ケーブルがいくら良くても、源泉から出てくる情報の質が悪ければ、話にならない。特にアナログオーディオではデジタル以上にメディアの質、すなわちレコードの質に再生結果が左右されます。それは、どのような耳にも如実に分かるレベルであることも多いのです。アナログオーディオを再起動してからというもの、システムの入り口の質で音の質が決まるという部分に、私は注目するようになりました。
不遜にも、ケーブルで音が変わるという部分については、その変化のバリエーションを知り尽くしたかのような錯覚を私は抱いていますが、散財の額からして、そして試した製品の数からして、この錯覚は完全に錯覚のみとも言い切れないでしょう。また、近頃はもう高級ケーブルのレビュー合戦も一頃に比べれば随分と下火になった気もします。(一部ではひっそり盛り上がってるようですけど)メーカーさん達の方も出来ることはやり尽した感が否めないですね。あの頃の、猫も杓子も電線病みたいなブームは去ったようにも見えます。
とにかく、私個人は、もうケーブルは十分に聴きました。別なこともやりたいのです。もっと音の源泉に近いところ、というより音の源泉そのものを良くしたい。

ところで、
目をつけているオーディオ機材があって、それを買うか買わないかの判断は、私の場合、その音質によって決めます。しかし、それを売らないで長期に渡り、持ち続けるかどうかは、ルックスや使い勝手がいいかどうかも重要となるのです。音なんてものは、よほどのものでない限り、早晩、飽きることは避けられません。(無論、よっぽどのものは別ですけどね。)実際、ずっと使っている機材はコンパクトで美しいデザインをまとっていることが多いものです。
例えば、デジタルをほとんど使わない今でもKLIMAX DSは、なかなか売る気になれません。このDSについては、音はそれなりなのですが、ルックスが良くコンパクトなところが気に入っています。こんなに美しく、小さくて邪魔にならず、しかもこれほど洗練された音を聞かせるデジタル機材はあるでしょうか?少なくとも現時点では、私は知りません。
結局、音の面でも形の面でも揺るがない美しさを持つモノだけが手元に残ってゆくようですね。

ここまで段落を分けて書いた二つの話をつなげる機材の話をこれから書こうと思います。
それは、レコードを完璧にクリーニングすること、それだけに特化した美しい機材のお話です。そして、その結末は、オーディオ機器の外観と音質という二面性、まるで異国の神のようなイメージを持つオーディオの哲学的側面にタッチする話でもあります。


Exterior and feeling

ドイツ製のHANNL Mera ELB Eco 24V 洗浄吸引式レコードクリーナー(以降HANNLと略)は重厚に黒光りするエクステリアを与えられた機材です。これは、“フォルムは機能から生まれる”と言う箴言がピッタリのアイテムです。
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HANNLをざっと眺めると、黒い厚手のアクリルで組まれた筐体と、鏡面仕上げされた銀色、あるいはヘアラインの仕上げのあるマットブラックの3本のアーム、ターンテーブルの真ん中のウエイトが目に入ります。全体にミラーシルバーとピアノブラックのツートンカラーで、艶のあるルックスです。特にローリングブラシのアームがピッカピカで格好が良いです。さらに、ターンテーブルのセンターに置く、レコードを重さで固定する事とレーベルシールの保護する役割を兼ねた丸い銀色のウエイトも目立ちます。このどっしりとした重みのある部品には吸着式固定パックという名前がついていますが、これがクリーナー全体の美しさを際立たせるようです。この部品の底部には大きなスウェーデン製の吸着リングが取り巻き、レコードにピタリと密着します。洗浄液が溢れても、レーベルに被害が及ばない仕組みです。
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専用のダストカバーをつけて眺めますと、機材は一つのまとまりとなってボリュウムもあり、その存在感は小さくない。安物のアナログターンテーブルなどよりも、エレガントで精密な印象であり、見栄えがいいです。オーディオアクセサリーというジャンルに入る機材ですが、これをアクセサリーと呼ぶのは憚られます。実物を前にするとグッと来るものがあります。上部に出ているローリングブラシ、洗浄液吸引アーム、平ブラシアームの材質は金属を多用して耐久性が期待できそうですし、工作精度も高い。全体の重さは17kgもあり、なかなか重厚であります。

このHANNLの形は無理やりデザインされたものではなく、レコードをオールインワンで完璧にクリーニングするということを追求して自然とデザインされた面が大きいと思いますが、それだけでは説明しきれない道具としての美しさが滲み出ているようにも思います。
とにかく、ただのレコードクリーナーに、過剰なほどしっかりした造りと立派な形を与えたドイツ人の発想には恐れ入るしかありません。こういうモノは日本人のエンジニアは作らないでしょう。どうあっても、こじんまり、スッキリして平均的かつ姑息なデザイン、造り、発想に終始してしまう。日本のオーディオメーカーのダメなところです。

基本的な操作切り替えはフロントパネルのダイヤルを回したり、押したりして行います。(CH Precisonのプレーヤーの操作系みたい)また、ターンテーブルの回転速度もダイヤルで無段階に調節できます。ブラシで洗う時は比較的速く、洗浄液を吸引する時はゆっくりと回るのが望ましいので、この回転速度調節機構がついていることは、高度な洗浄を行うには重要なのです。
基本的なHANNLの洗浄動作としましては、レコードの上に洗浄液を垂らし、回転させながら伸ばし、盤面で攪拌してダストを浮かせて取り除いたうえで、液ごと残らずバキュームで吸い取る、ということで要約できそうです。この中では、レコードの表面で洗浄液を攪拌することと、残った液を残さず、強力に吸引するという動きが重要でしょう。この二つの動作を行えるクリーナーは他にないようです。
実機において、回転する各部の動作は確実で危なっかしさがない。細かな部品まで吟味され、堅牢なので信頼性が高いようです。モータートルクは力強く、アナログプレーヤーのモーターのようにひっそり遠慮がちに回る感じではありません。工作機械のモーターのようです。そうであっても動きが大雑把で、かえってレコードにキズをつけてしまうようなところもないし、指を挟めてケガをしそうな動作もない。吸引力もかなり強いので、まったく液の残りはありません。ただし、ターンテーブルの回転自体はほとんど無音に近いのですが、吸引時は小型の掃除機くらいの吸引音が出てしまいます。前のモデルおよび他社のバキュームクリーナーよりは静かなので、一応は良しとします。

このHANNLでクリーニングしたレコードの盤面の性状は、シャンプーやリンスのテレビコマーシャルに出てくる、注意深く手入れされた長く黒い女性の髪のようです。若い日本女性の真っ直ぐな黒髪を同心円状に正確に配列させたような感じです。最も短い言葉で言えば「艶々」という状態。ただ、このクリーナーが取り除こうとしているのは主に目に見えない小さな汚れ、レコードのグルーヴに付着するマイクロダストですから、見てくれがキレイに見えているだけでは意味がなさそう。

なお、このHANNLの欠点はいくつかあります。
まず、タンク内の洗浄液の残量が外から確認できない。タンクのフタを開けて(このフタも緩いので困る)、中を見ても洗浄液がどれくらい入っているのかよく分からない。マニュアルでは作業時は常に四分の一以上、液が入っているべきとされていますが、タンクの中が暗くて見えにくい。そこで私はフタを開け、液を注ぐ口から棒を入れて、大体のタンクの深さを測っておきました。以後はその棒をタンクの中に入れてから抜き、棒がどこまで液で濡れているかを確認しまして、残量を測っています。こんなことをしなくても、残量が分かればいいのに。

また、多くの動作が結局はマニュアル動作であり、全自動からは程遠いのも欠点。長くなりますが、洗浄時の具体的な操作を大雑把に辿ってみるとそれは分かると思います。
タンクに洗浄液が入り、電源も入った状態で、まず、レコードをセットし、ラベル面保護のウエイトを置く。ローリングブラシと平らブラシも自分の手でセットし、ダイヤルを回してプラッターを回転させる。次にダイヤルをプッシュして洗浄液をレコードの上にたらす。そのまま何回転かしたら、ダイヤルを回して逆回転させ、さらに何回転かさせる。終わったらローリングブラシと平らブラシを自分の手でよけて、吸引アームをセット、ダイヤルを回して吸引する。ここでは放置しておくと自動的に逆回転してくれるので、3分弱でほぼ完全に洗浄液を吸い取りきる。最後にラベル面保護のウエイトを外してレコードを慎重に取り出す。これで一通り終わりです。さらに乾かす必要はなく、吸引が完全に終わった時点でクリーニングした面は針を落とすことができます。こうして何回も手を動かして、やっと片面のクリーニングが終わります。片面の洗浄にかかる時間は5分くらい。最短の時間で済ませたいなら、この間はHANNLの前を離れないで作業することになってしまいます。実際やってみると、自分の手や目を使って行う、これらの作業は、レコードを洗って、綺麗な音で音楽を聞きたいという意思がないとできない水準の面倒臭さがあります。

この作業の中では、ローリングブラシの高さを丁度よく決めるところが特に難しい。回転するブラシの先がレコードに接触するか、しないかぐらいの位置に、目で見ながら高さ調節をして固定するのですが、結構、上下の調節の動きが固くてやりにくいうえ、つくか・つかないかという加減が目視では微妙です。私の研究では、ここで上手くすれば、水滴をわずかにしかハネさせることなく、十分なクリーニングの効果が得られますが、結構難しい。

さらに、吸引時の音は深夜に作業するにはちょっとウルサいとか、専用の洗浄液が高いとか(500ml,5000円)、ブラシには簡単なメンテナンスが必要なこと、液を吸引しすぎると静電気が起こること、吸引ブラシに貼ってあるフェルトが何回も吸引をやっているうちに濡れてきて、レコードから放す時に微かな水跡をレコードに付けてしまうことがあるなど、細かい不満もあります。特にターンテーブルシートがやや安っぽく、ホコリがつきやすいことは困ります。クリーニングした面を裏返し、クリーニングする際に、裏返した洗浄済の面にマイクロダストが付着してしまうと意味がないです。これについては、作業中はスマホのタッチパネルを掃除するコロコロでホコリを取り、使わないときは専用のダストカーバーをかぶせ、ホコリが落ちて来ないようにすることで対策としています。また、水跡を残さないためには、その都度キムワイプ等で余分な液を吸引ノズルから拭き取っておくこと。しかし、これらはマニュアルにない余分な作業であり、全く面倒でしかありません。

ここまでの所見のまとめとしては、とにかく外見はよく出来ていて、動作も確実ですが、実際の洗浄作業はそれほど楽なものでも、楽しいものでもないという所でしょうか。これで、音質向上がソコソコというレベルであれば、高価なだけであまり顧みられない機材になってしまう可能性もありますが、そうはならないところが凄い。洗浄効果自体はかなり素晴らしいものなのです。


Sound effect 

HANNL Mera ELB Eco 24V レコードクリーナーでクリーニングしたレコードを手持ちのシステムでかけてみますと、場合によってはドキッとするほどいい音で音楽が鳴ってくれる。そんな時は高揚した気分になって、音質を左右するカギは、常に意外なところに落っこっているものだなと再確認する。この掃除屋の実力を侮ってはならないのです。

とは言うものの、幻想を抱いてはいけません。一回でもクリーニングすればパチパチノイズが完全に消えるなんてことはない。大幅に減るだけです。完全にはなくならない。でも完全になくならなくても、大幅に減るだけで随分と清々(すがすが)しい音楽体験ができます。古いレコードでは、それこそ天と地ほどの差があります。HANNLで洗浄すると、明らかに見通しがよくなり、サウンドステージは格段に広く感じられます。音質を云々する土俵が違ってしまったかのようです。アナログレコードはCDに比べてチャンネルセパレーションが悪く、音がスピーカーとスピーカーの間に凝集するような振る舞いを聞かせることがありますが、洗浄後はスカーッと音場が左右に広くなって、実はこうだったのかと大変驚かされる場合があります。

今まで、クリーニングをしていない古いレコードでは、ノイズを聞いているのか、音楽を聞いているのか分からなくなることもありましたが、HANNLのおかげで常に音楽だけを、しかも音楽の本当の姿だけを味わうことが夢ではなくなりました。古い盤を安心して聞けるようになったのです。
クリーニングしていない古いレコードを聞くということは、場合によってはパチパチ、ガサガサのノイズの間から音楽を覗き見ているような状態です。そのままでは聴くに堪えない音かもしれない。こんな状態のレコードをノイズレス・クリーンなデジタルファイルの音に馴れきった若い人たちに聞かせて、どうだ!いい音だろう、これが分からないヤツは、まだまだ修行が足りん、というような態度を取る方を見たことがあります。
そうです、そういう言動をしそうな方は、消費税増税前に、ヴィンテージのアンプやスピーカーに投資するのもいいですが、むしろ、このHANNLを早めに購入した方がいいかもしれません。ああいう埃っぽい音は、本来のレコードの音ではなかったのだとHANNLは教えてくれます。パチパチノイズの大半がなくなるだけで、古いアナログレコードは、これほど現代的なサウンドソースになりえるのです。

パチパチノイズが減ること以外にもいくつもの音質的メリットがHANNLのクリーニングには含まれています。
このHANNLでの音質の違いの一つは、レコードの溝に針を落とした直後から聞こえはじめます。歌い出し、弾き始めの瞬間に違いがあります。音が始まる瞬間の直前の静寂が感じ取れるのです。そこからなんの断絶もなく音楽が始まる様がなんともスムーズです。なぜ、この変化があるのか、上手く説明できませんが、やはりノイズが減ったということと無関係ではないでしょう。
そして、次に驚くのはダイナミックレンジが明らかに拡大し、伸び伸びと音楽が鳴るということです。音の細かいところが聞こえやすくなるのは勿論ですが、全ての音の音量が上がったような印象を受けます。パチパチノイズは当然減少するので、大音量で聞き易くなるのは当たり前ですが、そんなことをしなくても、音が自然と大きくなり安定したような印象を受けます。大きくなった音像はふやけたような、締りのないものなってしまうことは無くて、むしろハリが良くなり、鮮度が高く感じられます。音全体に瑞々しさが倍加するような印象です。さらに、音の立ちあがり・立下りにストレスを感じさせないのが、アナログオーディオの特徴ですが、この長所も一段と強化されてきます。
私の感性では、音質に関してHANNLを使って悪くなるところは皆無です。

ただ、アナログオーディオにもいろいろな派閥があり、むしろナローレンジで見通しが悪く、パチパチノイズが盛大に乗るのが味わいだと信じて疑わない方もいます。私は、オーディオ界では有名な或る人にレコードは絶対に洗ってはいけないと真顔で言われたことがあります。その人は今でも、そう言い続けているようですが、HANNLを知ったうえで言うなら、それも見識でしょう。その道を往くと決めた方はHANNLなんぞを買わん方がよろしい。Air force oneもConstellationのPerseusも聞く必要はありますまい。私の目指す世界、HANNLが与えてくれる世界は彼らの居場所とは違います。こういう棲む世界の違いについて、いつも書くのですが、それは、なかなか超えられない壁です。同じアナログファンでも、分かりあえないことがあるなんて、傍から見ていると、どうも変なのですが。

このクリーナーの効果の凄さを実感する瞬間は、上記の如く、音を聞いている時に有るのは勿論ですが、クリーニングした直後のレコードで片面終わって針を上げた時にも訪れるのです。それというのも、クリーニング直後は針先に目に見えるゴミがついていたことが、ほとんど無いのです。当たり前のように思う方もおられるかもしれませんが、これは凄いこと。例えば10年以上前にリリースされた盤をHANNL以外の手持ちのクリーナーで何回洗って回してみても、必ず多少のゴミが針に付着してしまうことは経験済みです。HANNLの場合、回している途中に盤面に落ちてきたと思われる大き目の糸屑のようなものがついていることが時にありますが、それ以外にゴミが溝に残っていると肉眼的に分かった経験がほぼ無いです。トリモチ式のクリーナーで針先を触っても、なにもくっついていないように見えることがほとんど。また、洗浄後は静電気も起こりにくくなっているようです。洗浄後にレコード袋がレコードにくっつきにくくなっているのです。これは埃をレコードに寄せ付けにくくする要因でしょう。
とにかく、他のクリーナーでは、ここまで徹底的にダストを取れはしない。古いポップスやJAZZのレコードをかけると、一回、普通のクリーナーでクリーニングしても、針により溝からダストが盛大に抉り出されてきて、それが針に付着、針の自由な動きを妨げ、音を曇らせてしまいますし、針の寿命も縮まる。HANNLを導入して有り難いのは、音もさることながら、針の寿命が、かなり延びたらしいということなのです。


Summary

HANNL Mera ELB Eco 24V レコードクリーナーは、先進的なアナログオーディオを極めようというベクトルにあって、あるレベル以上の音を出したいと願うなら、ほぼ必須のアイテムでしょう。余人をもって成しえない音質向上があると私は思います。多分、これは言い過ぎではない。実際に自分の部屋で自作のクリーニング用ターンテーブルや、他社のクリーナー機材と比較しながらHANNLを使ってみると、それは、たちまち露わになる事です。例えば、数日前までここに置いていた、V社の安価なバキューム式クリーナーも悪くはなかった。でも、それは、このローリングブラシ付きのHANNLの敵ではないのです。細かい欠点こそ有るが、それはもう、この音に接してみれば気になりません。
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発売当初より、このHANNLは高価であり、現在は80万円弱という、レコードクリーナーとしては、ほとんど有り得ないようなプライスタグがついています。私が簡易なクリーナで最も優秀と思うRKC Premium Mk2の100倍近い価格。しかも近々に円安による値上げがあり、消費税も上がるという始末です。良い音も、美しいルックスもどんどん遠くなる気配です。しかし、まだ今のところは値段に見合った効果があるアイテムだと私個人は思いますし、ただのレコードクリーナーの外観に、これほど所有欲を満たしてもらえたのは嬉しい誤算でした。
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(追記として、2014年秋に日本に輸入されるようになった新しい超音波クリーニングマシンKlaudio CLN-LP200について、私の知り得るところを簡単に付記しておきます。このクリーナーについてはHANNLよりも良い所はいくつもあります。まず普通の水を使うので、専用液が必要なHANNLの10分の1以下のコストでクリーニングできます。両面を一度にクリーニングできるので、かかる時間は半分。出来上がったらすぐ聞ける状態であることは、HANNLと同じです。しかもレコードは基本的に差し込んで、ボタンを押し、出来上がりのブザーが鳴るのを待つだけと、はるかに簡単。HANNLのローリングブラシのように水滴もハネる恐れもありません。また10インチ盤、EPなどにも対応するアダプターが出る予定もあり。重いので移動用の取っ手までついてます。本体価格もHANNL Mera ELB Eco 24Vよりも20万円ほど安い。こうなるといい事ずくめかと思うのですが、ひとつだけ問題が。私は一枚だけ某所で洗ったものを聞いただけなのですが、肝心のクリーニングの効果が、明らかにHANNLと違うような印象でした。これは私だけの意見ではなく、私の知り合いで両方のクリーナーを試した方に、それとなく聞いてみると、ほぼ同意見でした。簡単に言えば、HANNLによるダイナミックレンジの拡大などのノイズの低減以外の音質向上がないのです。HANNL専用の洗浄液に含まれる界面活性剤の威力ではないか、という方がいますが、この違いが具体的にどこから来るのか分かりません。
ここでの結論としては、音質向上について深くこだわらないで、多くのレコードを安く、ピカピカにしたいなら、Klaudio CLN-LP200をお薦めします。これでも多くの方にとっては十分過ぎるクリーナーですから。しかし、音質を追求するならHANNLだと思います。)

繰り返しになりますが、正直、単なるレコードクリーナーに、これほどの能力とエクステリアを与えたドイツ人のセンスに敬服します。この製品の存在は、アナログオーディオという趣味が、その内部で複雑に分岐しつつあるオーディオという趣味全体の中で、最も深みをもったジャンルであることに裏付けを与えているようです。この深みは、アナログレコードという素晴らしいサウンドソースへの愛の深さそのものです。このような深さは今、再編されつつある、否、もしかすると見えないところで暴力的な革命のように破壊されつつあるかもしれないデジタルオーディオには、未だ備わっていないのです。
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この美しく、しかも素晴らしく大袈裟なHANNLにクリーニングされた艶々と黒光りするレコードの音を聞いていると、オーディオというものに古代ローマのヤヌス神のようなエキゾティックな二面性があることを、私は思わずにはいられません。そうなのです。入り口の守り神であり、全ての行いの始まりを司る神である、二つの顔を持つヤヌスを、私は想い起します。オーディオという趣味に使われる機器には全て、広い意味で使い勝手なども含めた外観という側面と音質という側面、つまり二面性があり、機材全体としての出来の良し悪しは、それらの間にある危ういバランスで決まるところがあると考えます。

音の入り口の部分において、ともすれば矛盾しがちな二面性が一つの機械として結実して出来た、このレコードクリーナー。そこに私は厳(おごそ)かな神の顔を垣間見るのです。そして、その厳かな神像の台座にぶら下がる、これまた厳かなプライスタグの数字に青い吐息をついたりもするわけです。

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by pansakuu | 2014-02-25 23:05 | オーディオ機器