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CHORD Hugo 高性能モバイルDACの私的インプレッション: I meet Hugo


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人生はからくりに満ちている。
日々の暮らしの中で、無数の人々とすれ違いながら、
私たちは出会うことがない。
その根源的な悲しみは、
言いかえれば、
人と人とが出会う限りない不思議さに通じている。

星野 道夫(写真家)



Introduction

あの大雪の日、
私はHugoに出会った。
もう、認めなければなるまい。
とうとう、これだけの音質を持ち運べる時代になったことを。
もう、静観してはいられなかった。
私はキーボードを10本の指で叩き始めた。

モバイルのDACつきのヘッドホンアンプとか、ヘッドホンアウトがあるDACというもの(違いはどこ?)を沢山聞いてきたし、デジタルオーディオプレーヤーも様々なものを試してきたが、この場で特別に取り上げる気分にさせるような傑作は、今まで一つもなかった。

これらの製品の共通点は、多かれ少なかれ妥協の産物ということであった。価格やサイズ・重さ、電源、パソコンへの接続等が制約として、音質の首を絞めている。というか、絞めまくっている。こんな送り出しの音ばかり聞いていては、イヤホンの音質がいくら良くなっても無意味だろうと、一人で腹を立てたことがある。アニソンの音質が多少悪くても、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)の出音が良ければ、もう少しは救われるはずだと思ったりもした。これらのモバイルオーディオ製品は、音質のために、ほとんど際限なく贅沢に製品の仕様を決められるような、ハイエンドオーディオのプロダクツとは、開発の方向性そのものが違うと、ずっと感じてきた。歩きながら、あるいは電車の中でうとうとしながら、あるいは公園のベンチで日差しを浴びながら音楽を聞くために、どれだけ多くの音質的ファクターを犠牲にしなくてはならないのか。技術は進歩しているのに、これが大衆のため音質のスタンダードなのか。いつも、そう思って、DAPを嘆きながら聞いていた、渋い顔で。面白そうな新製品が出るたびに、すっ飛んで行って真っ先に聞いているのだが、聴いた後の捨て台詞は常に「この程度か」。

昨日、Hugoとほぼ同時に聞いたAK240でさえそう思えた。これだけでは、まだまだ薄い音だと思う。随分と音質も使い勝手も改良され高級化されて、DAPとしては、ZX1など比較にならないほど良いものだ。しかし、いかんせんハイエンドオーディオの据え置きのプレーヤーから出てくる音と一対一で比べると、それこそ比較にならないほど情けない音である。そう、比較する相手がおかしい。200万円オーバーのSACDプレーヤーやDSと比べるようなものでは、そもそもない。しかし、私の場合、自分が普段親しんでいる音がそういうものばかりなので、そういう比べ方になるのが避けられない。AK240はポータブル機材の音の上限を押し上げたのは確かだが、わざわざ私が買うほどの音とは思えなかった。(早まったか?)

ところで、
いつも思うのだが、そもそも、ある種のデジタル機材のジャンルにおいて最高の音質を狙っていながら、他のメーカーから供給されるDACチップを使うこと、そして、そこから出てくる音に疑問を感じないのだろうか?このプレーヤーのキーデバイスであるチップの音は、本当に自分たちが求める音そのものなのか?エンジニアさんたちは、そういう疑問を持たないのかと疑う。AK240のサウンドは、かなり器用、要領が良くて利口、そして素直な音だが、まだ自分の音というレベルのものを出しているとは思えなかった。主張の感じられないオーディオは私の心には響かない。

しかし、Hugoは違った。
Hugoは私のオーディオマインドを充たす、
初めての持ち運びを前提としたデジタルオーディオ機器なのである。


Exterior and feeling

感覚的に、大きさは文庫本あるいはCDケースよりやや大きいぐらい、厚さは二枚組のCDケースくらいだろうか。132×97×23mmの、銀色のビーズショット仕上げで削り出しのアルミ製の筐体である。CHORDの製品らしく、筐体に丸い覗き窓の穴が開けられ、レンズが嵌め込まれている。その奥には例の如く回路基板上にLEDが並んで光っているが、バッテリー残量、デジタル入力ソースの選択、クロスフィールドフィルタの状況を表す。また、レンズではないが白いプラスチックの嵌め込まれた丸窓も別に開いていて、これは裏表にある。これは入力されるサンプリング周波数を色で表すための窓であるが、同時にブルートゥースの電波を通すための穴でもあるらしい。ボリュウムは半透明のホイールのような形状で筐体の表の中央にある。こちらもボリュウムを上げたり下げたりすると青、緑、赤と色が変化する。色の変化を利用したカラフルな表示方法が面白い。
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片方の側面には入力の切り替えボタン、SDとHDで分けられた2つのUSB入力端子、電源スイッチ、充電ポートがある。反対側の側面には6.3mm一つと3.5mm一つのヘッドホンジャックとRCAアンバランスアナログ出力、RCAデジタル入力、Optical TOS link入力がある。CHORDの製品らしく端子類は混んだ配置になっており、場合によっては、お互いにぶつかったりするのではと心配になる。(今回はRCAアナログアウトとRCAデジタル入力、光デジタル入力は試していない。)
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この筐体側面には3本の溝が入っている。これはiPhoneなどをゴムベルトでHugoに固定する際にゴムベルトが滑らないようにするための溝らしい。細かい配慮があるのは嬉しい。また大きく刻印されたHugoのロゴの書体もいい。もし可能ならブラック仕上げのHugoでゴールドのロゴのモデルを出して貰えると嬉しい。ゴージャスな精悍さがこのDACのイメージに加味されるであろう。

Hugoは384kHz/32bitのPCMハイレゾデータ、DSD128/1bitのデータに対応することを掲げているが、こういう数字自体はあまり意味がないと思っている。それはPCオーディオをある程度、長くやれば分かることである。大きな数字で飾られた大きなデータで音楽を聞くことは、安心感があるが、実際の音楽的感動とはリンクしない。音の良さというより、ただの音の違いでしかない場合も多々見受けられる。音の良さの本質はこういう数値とは別なところにあるのである。

電源はリチウムイオン電池であり、4時間でフル充電となり、8~12時間の連続再生時間を確保する。再生時間に幅があるのはハイレゾデータなどの大きなデータを処理すると、より大きなエネルギー消費になることが関係しているようである。こういうところでもハイレゾは特に有利とは言えないと思う。

Hugoは全体にとてもコンパクトにまとめられており、またアルミの引き抜き材を活用する、多くのポータブル機材よりも堅牢に出来ているように見える。どこへでも一緒に持ち運べるという意味のWherever you goという、この製品のキャッチフレーズの中のyou goを取ったらしい、Hugoというネーミングに相応しい仕上がりである。

ただ、CHORDらしく、あるいは試作機だからか、この入出力がなんなのかという表示、印刷にしろ、刻印にしろ、なにもない。さらに、いくつかのイヤホンのL字のミニプラグはこのHugoに挿し込めないものがあることが分かった。ヘッドホンジャックの周囲を丸く彫り込んで、コネクターを取り付けてあるのだが、この部分が小さすぎる。加えて、RCAアナログ出力端子についても、接続できないRCA端子が若干ありそうだ。さらに加えてOptical TOS link入力も入らない場合があるようだ。ハイエンドなCHORDのDACやアンプでも、端子が混んでいて、取り付けられないケーブルがあるなどの欠点があったので、またかというところだ。こういう部分は改良の余地があると思う。

なお、このHugoのデジタルインターフェイスなどの詳細については、著名なS氏のHPやメーカーのHPを見れば分かるわけで、私のような素人が、ここで受売りを書き連ねてもしかたないと思うのであえて書かない。我々はスペックを使うのではないし、聞くのでもない。素人が実物に触れ、聞いてどういう印象を持ったかということを、ここでは大事にしている。


The sound 
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堂に入った、立派なものである。これほどの音質がこの大きさで、しかも20万円台で手に入るとは夢のようである。ここ10年間で発売されたポータブルのデジタル機材で最も音が良い。80万円くらいまでの据え置きのDACで、このレベルの音を出せるものさえ、ごく限られているだろう。Hugoの20万円台の価格というのはあまりにもバーゲンプライスである。このDACの能力からして50万円でも決して高いとは思えない。音にはアクにならない程度の絶妙な個性があり、CHORD独自の音の主張が巧みなサジ加減で盛り込まれている。

今回、HugoはiPhoneをデジタルトランスポートとして、主にPCMのハイレゾデータをEdition8とHD800で聞いた。今回のポタ研の入場者は大雪のため、やや少なく、比較的、時間をかけてHugoを占有することができた。

ヘッドホンで聞くHugoのサウンドは、伸びやかでクリアーでありながら、力強さを含んだ音、一本の芯の通ったしっかりした音である。輪郭はCHORDらしくクッキリとしているが、隈撮りが強過ぎてキツイ音ではない。むしろ柔らかさ、滑らかさなど、ダイヤモンドエッジとは正反対の側面も強く感じさせる。初期のCHORDのDACに感じたギラギラした感じではなく、より洗練された音だ。音の温度感はクールであるが、冷たすぎはしない。電源がコンセントからではなく、ノイズがもともと少ないリチウム電池であること、DACと内臓のヘッドホンアンプへの電源の取り方を工夫していることなどからか、ノイズがかなり低く、ダイナミックレンジが広く取れているように感じた。

これは今までのモバイルデジタルプレーヤーからは全く聞けなかった音のレベルである。私が聞いてきたポータブルのDAPにはいつも音の存在感や力強さが不足していた。複雑なドライバー構成を持つ、素性の異なるイヤホンを適切にドライブできるという能力だけでなく、音楽に秘められた演奏者や作曲者の内的な衝動を訴えるだけの表現の余裕がまるで感じられなかった。Hugoはより高い価格帯の据え置きDACを超える性能を持たされた結果、その音楽表現の余裕・ゆとりを確保するに至っている。様々な音楽をそれらしく表現できる懐の深さのようなものが感じられる。これだけ小さい回路規模でバッテリー駆動となると、こじんまりした音になりがちなのだが、雄大とは言わないまでも、十分なスケールが得られている。
クリアーでありながら、力強い音、一本、芯の通った頼りになる音というのは、CHORDの機材に伝統的に備わる音、英国製、独逸製の機材に見られることの多い特徴なのだが、そこのところも見事に音に出ている。しかもそれが、個性として出しゃばりすぎす、丁度良い塩梅で耳に届くところが素晴らしい。
HugoはCHORDの主力製品QBD76に比肩しうる技術を小さな箱に詰め込んだDACである。とても優秀なA級動作のヘッドホンアンプをDAC部に最短距離で結合させた構成であり、DAC部、ヘッドホンアンプ部とも特筆すべきクオリティを持つようだ。ヘッドホンの振動版をきっちりと掴んで、的確にしかも余力をもってドライブしているように感じられ、大いに感心させられた。

Hugoに搭載されたザイリンクスのフィールド プログラマブル ゲートアレイを用いたCHORDオリジナルのDACのサウンドは、前作のQBD76よりも、さらにブラッシュアップされたのではないかと思わせるほど、完成度の高い音であった。放射される音のエネルギーはQBD76が勝るが、洗練された大人の雰囲気、聞きやすさはHugoも引けを取らない。
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このような他社のチップに頼らず、自前のDACを作るメーカーは音に一家言あり、他のメーカーとは違う音が出せる。MPS-5はその例だが、この音の違いにカネを払う価値を見出す私なのである。
そうは言っても、世界中探しても、DACを動かすためのプログラムを自社で書いて、走らせることのできるオーディオメーカーはかなり少ない。現在活動しているメーカーとしては、Playback designs、Weiss、EMM Labs、dcs、そしてこのCHORDあたりだろうが、全てハイエンドの機材を開発するメーカーであり、モバイルデジタル機材に出てきたのは今のところCHORDだけである。

装備されたデジタルボリュウムの出来も良い。絞るとビット落ちして情報量が寂しくなるようなことがない。昔、Wadia860というCDプレーヤーを内蔵のデジタルボリュウムを使って、プリアンプなしで聞いていたが、あの頃のデジタルボリュウムとは隔世の感がある。しかも、こんなに小さいのである。

そして、私個人は、Hugoの音のまとめ方はLINN Sondek CD12に似ているとも思った。この心地良い音の密度、芯の有る弾力感があの名機を彷彿とさせる。
私にはCD12を使い継いだ経験がある。だから、あのCDプレーヤーの素晴らしさについては熟知しているつもりだ。しかし最後のCD12が私のもとを去って5年ほど経った今、このCD12に似た音を持つDACの出音を聞いてみると、懐かしさではなく、むしろ不意打ちの新鮮さを感じた。デジタルオーディオに関してはKlimax DSやMAN301やオーレンダー、スフォルツァート等の機材を用いたPCオーディオでの楽音の再生に親しんでいながら、漠然とした不満を抱え、その埋め合わせをアナログオーディオに求めている人間が、である。CHORDのDACは、あの耐えられない音の薄さ、存在の軽さを駆逐しつつある。音に密度の高さ、独特の濃厚な香りが微かにだが、明らかに感じられる。これは、どこか食い足りないPCオーディオ系のサウンドに一石を投じるものだろう。音響空間に綺麗に音の粒子が拡がるのではなく、芯のある明確な音像を結ぶのである。

個人的な印象ではHugoはEdition8で聞くよりも、HD800で堂々と聞いた方がよいと思われた。それは、このDACの出音に、それなりのスケール感があるため、そしてHD800を丁度よくドライブできるくらいのパワーがあるためである。ハウジングの小ささや、振動版の広さ、材質の癖などから、ややチマチマした音という印象のあるEdition8には、もしかするとオーバークオリティなDACかもしれない。AK240のクオリティを十分に受け止められるイヤホンがかなり限られるように、それを上回るサウンドを持つHugoのクオリティに見合うのは、やはり最強のヘッドホン群であるべきだ。あの場で、Edition5でのHugoのパフォーマンスをチェックし忘れたのが悔やまれてならない。アイツは、値段はともかく、音は一級なのだから。


Summary

だいたい、今までがおかしかった。
これだけ、移動中に音楽を聞く人が多くなって、これだけ多くの関連製品が出現、息長くブームが続いているにも関わらず、音の大元であるデジタルプレーヤーに、まともなサウンドを出せるもの、私のオーディオマインド・高音質を求める心、欲求を満たすものがほとんどなかった。本格的なハイエンドオーディオ製品と見なしうるような音質を持つ送り出しが、ほぼ出なかったのである。Hugoは私にとってはモバイルオーディオのブレイクスルーであり、これこそオーディオマニアならスルーすることのできない製品であると思う。

Hugoの出音に織り込まれたCHORDらしい音の側面にチラホラと開発者の顔が見える。ジョン・フランクス氏、ロバート・ワッツ氏の横顔。
自分のメインの機材であるConstellation audio Perseusを聞くたびに、私はジョン カールという鬼才の横顔を見るともなく見る気がする。こうして開発者の横顔が見えるような機材は良い機材だというオーディオの習慣を再確認する日々なのだが、このHugoは、ポータブルのデジタル機材で初めてエンジニアの顔がはっきりと見えるモノだった。出音にデザインに使い勝手に、そして価格設定にまで、Hugo全体がChordのエンジニアの性格や力を全世界に示しているような気がする。これは実は人と人との出会いに近い。Hugoを手にして、これを聞く人は、Hugoを介して、Hugoを造ったエンジニアに出会うのである。それはポータブルオーディオを進化させた或る英国人との出会いである。

オーディオの機材が良いものであればあるほど、その出会いはモノを介しているにも関わらず、直接の人と人との出会いに近づく。こういう自分にとって良い機材との出会いをいくつも重ねていけるどうかが、その人のオーディオの深化の度合いを決めてゆく。

このインプレを読んで興味持った方は、是非とも、どうにか都合をつけてHugoに会いに行っていただきたい。そして彼の言葉である音質に耳を傾けてほしい。もし貴方にオーディオマインドというものがあるなら、これを聞いて後悔はしないはずだ。
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私のように、なるべく多くのオーディオ機材に接することを事とする者であっても、
所詮は素人であるから、聞くこともなく、すれ違ってしまう機器の方が圧倒的に多くなるのは仕方がない。
こうして日々、生活していても目を合わす機会もなく、言葉を交わすこともなく、
ただ、自分の傍らを過ぎてゆくだけの多くの人々がいるのと同じようなものである。
しかし人は、そういうすれ違いの中で、自分にとって特別な人と出会うのではないか。
それは、あれだけ多くの人達と 日々すれ違っていることを考えると不思議なことなのかもしれない。

私はこうしてHugoと出会った。
もちろん、彼に出会ったことが、私のオーディオライフに何をもたらすのかは、まだ分からない。
しかし、その不思議な幸せが特別な人との出会いのように
深く深く、私の心に沁みこんだことだけは、自分で、よく分かっているつもりである。

by pansakuu | 2014-02-12 22:32 | オーディオ機器