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Air tight エアータイト ATM3011の私的インプレッション:凱歌を聴け

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今、そこにある一組のアンプ。
これは200Wの大出力を誇る強力な真空管アンプATM 3011である。
タワー型のモノラルパワーというと、
マークレビンソン、NAGRA、HARCLO、VTL、クラッセ、グラスマスターなどの
フラッグシップモデルが思い浮ぶ。
アンプのタワー化は省スペースで大型のモノラルパワーを使う、ほぼ唯一の方策だ。
結論から言えば、価格を含めた総合的な評価では、
ATM3011が最も味わい深い音を持つタワー型パワーアンプと私は思う。


Exterior and feeling

最上階にシャンデリアの暖かく豪華な灯をともした
ツインタワーを思い起こさせる建築的なモノラルアンプだ。
横幅を20cmあまりに絞り込んだこのタワー型の形状。
「この形なら置ける」
思わずつぶやきが漏れる。
そして自衛隊の装備品のように精悍なグリーンスチールのシャーシ。
片チャンネルで46kgあるが、
設置はフリースタンディングと決まっているので、むしろ扱いやすい。
分厚いフロントパネルの上部に開いた
四角い窓には控えめにAir tightのロゴが見える。
その下にはReferenceの刻印。
品質への自信のほどが伺える。
フロントに丸く開けられているバイアス調整メーターの小窓が可愛らしい。
側面上部には金網が張られた窓がいくつか開いていて、フロントの窓のみならず、
そこからも6本パラッた6550がうっすらと見えて嬉しい。
このアンプの発熱は
片チャンネルで6本以上の真空管を使うわりに
あまり大きくないのは、ちょっとしたサプライズだ。
NAGRAやグラスマスター、アインシュタインのアンプと比べて小さいと思う。
室温23℃、やや大き目の音量で2時間以上ドライブしても、
シャーシにしっかり触れることができた。
無論冷たくはない。アツめのぬるま湯に手を突っ込んだぐらいな感じである。
発熱というものは、この手のパワーアンプを買うかどうかを考える場合、
スペースファクターとともに大変重要なことだと思う。
以前、グラスマスターSD2を使う方のリスニングルームにお邪魔したとき、
6畳間では、夏場、クーラーをフル回転させても、
やや無理があるほどの発熱だったのを思い出す。
アインシュタインのモノラルパワーにいたっては
部屋が狭いと冬でもクーラーが欲しいくらいだという。

トップには細長いフタがある。
そこを開けると小さな調整ボリュウムが並び、
個別の真空管ごとのバイアス調整を可能としている。
バックパネルにはWBT製のRCA入力端子とスピーカー端子が1個づつ。
実にシンプルな入出力系だ。清い。
それに出力のアッテネーターもある。
これは様々なプリアンプに対応して全体の音量を整えるには便利だが、
信号が余分な部品を通ることに抵抗感がある方はノーサンキューだろう。
足は四足で、丸いアルミの部品とゴムを組み合わせた
ごく普通のものだ。これもなんだか清い。


The sound 

Air tightはアナログレコードが好きだ。
デモはほとんどの時間がアナログレコード演奏になりがち。
私の参加した二回の試聴ともドイツ製アナログレコードプレーヤーと
フォノコントロールアンプATE2001を組み合わせていた。
ATE2001については
他のアンプとの組み合わせも2回ほど経験済みであるから傾向は把握している。
アナログレコードのサウンドと
ATM3011とのペアは最高のマッチングであり、
他のどのアンプとの組み合わせも敵わない
香りの良さと味わいで心が満たされてゆく。
モノにはそれを人に買わせようとする力と使わせようとする力があるものだが、
このパワーアンプにはそのどちらもが十二分に備わっている。
仮に発熱があろうとも、大きくて重く、高価であろうとも、
その実物の雰囲気と音に触れただけで、
欲しくなり、自室で演奏させたくなるオーラをATM3011は身に備える。

ATE2001と組み合わせて鳴らすATM3011は凱歌を奏でるアンプである。
音の滑らかさと威厳。
そして、タイトな低域のフットワークの良さ。
適度な分厚さを持つサウンドに、
これらの要素が混ぜ込まれてATM3011は朗々と歌う。

高域は控えめな出方で、
清清しいヌケの良さや金属的なシャリ感は前面には出ていない。
イブシ銀の光沢を放ち、静けさ、落ち着きを感じる高域。
シンバルの力一杯の一閃も派手にはしない。

中域はやはり分厚い。予想通りだ。
パースペクティブのある整理された中域では断じてないが、
深くコクのある音色と闊達で的確な太筆書きの輪郭線で
陰影豊かに、音像を描き切る。
油絵調と言えば外れないが、そんな単純な言葉で言い尽くせるほど、
シンプルな中域ではない。
豊潤なコーヒーをゆったりと口に含むような、
僅かに苦みばしった香りが聴感から想起されるのは何故だ。
思い入れや感傷を意図的に遠ざけて聞けば、
これはニュートラルでアナログレコードにマッチした滑らかさを持つ
ごく普通の真空管パワーアンプのサウンドかもしれない。
しかし、その音に没入すれば、
そんな在り来たりな情緒では終始していないことに気づくはず。
どんな音楽を演らせても
味や香りのイメージが想起されて、リスナーを更に一段深い音のニュアンスにいざなう。
このような感覚は他のアンプではなかなか得がたい。

低域はタイトで良く弾む。
ディープに伸びきって、
大スケールのサウンドステージを演出するのではないけれど、
ウォーキングベースの楽しさを堪能するなら、当然、この音調は歓迎されるべきだ。

このアンプの得意なジャンルは
クラシック全般、ジャズ全般、そして昔のポップスあたりだろうか。
ビートルズやプレスリー、フランクシナトラなどが合いそうだ。
個人的な印象では小奇麗で線の細い音楽よりは、
多少ガサツでも賑やかで楽しい音楽、
音楽のスケールの大きさで押し出す音楽よりは、
音そのものの動きの闊達さが生む快感が売りの音楽が似合うように思った。
モノラルパワーというとチャンネルセパレーションの良さとパワーの余剰感から来る
圧倒的なスケールと音の落ち着きが思い浮かぶが、
そういうハイパワーモノラルアンプのありきたりの図式の中に
小型のパワーアンプの持つまとまりの良さや、
小回りの良さをも十分に取り入れたところは、
ATM3011のすぐに分かる美点である。
しかし、それだけではないだろう。
ATM3011のサウンドの裏側には、表面的な落ち着きとはウラハラの、
高揚し、勝ち誇るウキウキした感じもあると思う。
そうあるべき時には、
時にほがらかに、時に高らかに、
オーナーのためにオーディオの凱歌を歌うことが、
このアンプの隠された使命かもしれない。


Summary

Air tightの製品全般にそうだが、
ATM3011のサウンドは、
やはり、アナログレコードの音調に寄り添う面が強いサウンドと思う。
さらに言えば、
現代のハイエンドなアナログオーディオの先鋭的な部分というよりは
むしろトラディショナルな、
クラシックなアナログ再生の王道への指向性が強いサウンドであることは
言っておくべきだと思う。
このような方向性でオーディオを極めていきたいと思われる方にとっては、
Air tightのリファレンスクラスのアンプは恐らく最終到達点のひとつと定めてよい機材と思う。
現代のスッキリ系のソリッドステートアンプとは一味違う音調であるから、
現用のパワーアンプは売らずに、
音楽に合わせて、気分にあわせてパワーアンプを切り替えるつもりで、
ATM3011を導入するのもいいなと思って、今日もカタログを眺めている。

by pansakuu | 2012-02-01 22:55 | オーディオ機器