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SONY MDR-Z1R vs GRADO GS2000eの私的インプレッション:対バンライブで盛り上がれ

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対バン(たいバン)、および「対バン形式」とは、ミュージシャンやバンド(主にロックやポップ)やアイドルが、ライブを行う際に、単独名義ではなく、複数のグループと共演(競演)することをいう。
by Wikipedia



Introduction


今年は例の映画のテーマソングなどで絶賛売り出し中のRADWIMPSだが、去年は全国対バンツアーという企画をやってしのいでいた。
ファイナルはZepp東京で、この時の対バンは先輩格のMr.Children。その夜はお互いに相手のファンに疎外感を抱かせない工夫もあって、無事にステージは盛り上がっていたようだ。翌日、それに参加した知り合いからライブのあらましを聞いた私は大昔のことを思い出して、なぜか少々しんみりしてしまった。

あれはインディーズシーン全盛時代のことである。
まだ無名だったMr.Childrenは渋谷の某ライブハウスに出ていた。私は彼らのファンではなく、別なバンドのファンだったが、上京するたびに暇さえあればそこに来ていたので、彼らのライブも見た。また、その頃は同じく無名だった、あのスピッツも、多くのバンドの中のひとつとしてそこに出ていた。私は偶然、この二つのバンドが対バン形式で出たステージを見た覚えがある。
RADWIMPS の対バンライブの様子を聞くふりをしながら、私はMr.Childrenとスピッツが競うように演っていたあの夜の空気を、そして、それをフロアの片隅でなんとなく傍観者として見ていた自分を思い出そうとしていた。特にスピッツについては、あの頃は現在と全然違う音楽傾向だった。今となっては貴重な体験であるが、その当時は特別なものを見ているつもりはなかった。(だいたい当時は彼らのことをよく知らなかった。)あの二つのバンドはあの頃と比べれば遥かにBigになったけれど、歩む道も目指す音楽もまったく異なってしまった。
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ところで、
ここ数日は、SONY MDR-Z1RとGRADO GS2000eを数回に分け、それぞれ異なる環境で試聴している。その感想をまとめて言うなら、これほど異なる傾向を持つフラッグシップ機の組み合わせは思いつかないということ。全く違う雰囲気を持つ最上位の音質が、当たり前のように並存できるという、今のヘッドホン界の幅広さが如何なく発揮された試聴であった。
この試聴は形としては言わば対バン形式なので、私としては必然的に去年末のライブの話を意識しながらやっていた。そして、それを意識すればするほど、頭にずっと引っかかっていた思い出、Mr.Children vs スピッツの対バンの構図がSONY MDR-Z1R vs GRADO GS2000eの対立の構図にそっくりとあてはまるような気がした。また、そういう不思議な相似を意識しつつ音を聞くと、今のヘッドホン・イヤホン界の図式をすんなりと理解できるような気もした。
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Exterior and feeling

・大きさ、重さ、デザインについて
SONY MDR-Z1R:
やや大柄なヘッドホンで重さは385g。持ってみると重くは感じないが、軽くも感じない。HD800など標準的なハイエンドヘッドホンの重量感。デザインは表面的には今風のスティルス系。目立つ要素をあえて消すような素振りが見て取れる。例えば全体が黒いカラーで統一され、表からSONYのロゴや型番らしきものが、控えめにしか見えない。中央が異様に盛り上がった独特のハウジングがやや目立つ。現代最先端のデザインであり、SONYらしい洗練、ミニマル感・先取り感が満載である。
Grado GS2000e:
そこそこ大きなヘッドホンだが重さはたった260gである。実際持って見ると非常に軽い。ペーパークラフトの模型を持っているようだ。ヘッドホンの中では高級機の部類に入るGS2000eであるが、そのグループの中では断トツに軽い。この軽さは得難い。デザインは昔ながらのGRADOのそれであり、もはや伝統的と言うべき大雑把さ。色調として自然素材である木材や皮革のブラウンカラーが目立ち、ナチュラル・オーガニックな印象。スライダーなどは相変わらず簡素な造り。ヴィンテージの機材のような雰囲気もある。
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・筐体の構造・材質について
SONY MDR-Z1R:
密閉型ヘッドホンとのことだが、この特殊なハウジングには通気性があるので、そう言い切っていいのかどうか。TH900やEdition9のようにしっかりと閉じているわけではない。網目状の堅牢なハウジングプロテクターが最外層にあり、その内側にプラスチック製のフレームと音響レジスターというパルプでできた真のハウジングがあるということらしい。こういう特殊な構造を取る事で密閉型でも、ある程度の音ヌケの良さを確保し共鳴を排除しているという。
このヘッドホンを形作る材質は様々な特殊素材であり、それらを最適な形状に加工して国内で組み立てている。ヘッドバンドのβチタン、ハウジングの内側に張り込まれたカナダ産針葉樹のパルプでできた音響レジスター(和紙の製作技法で国内で製造されるパーツであり、それを漉(す)くための水質・水温まで検討されているとのこと)、ステンレスワイヤーを編み込みイオンプレーティングを表面に施したハウジングプロテクター、世界で最も薄く大口径な70mmのマグネシウムドーム振動板、高磁束密度を誇る大型ネオジウムマグネット、音の伝播を疎外しないフィボナッチパターングリル(この13世紀のイタリアの数学者の名前をここで聞くとは。フィボナッチ数はヒマワリのタネの配列や花びらの並び方に現れるが、確かにそれっぽく見えるね、このグリル)、アルマイト処理したアルミ合金製ハンガー、シリコンリングを組み込んでメカノイズを減らしたジョイント(ケーブルのタッチノイズにこだわるなら、ここにもこだわれってことか)、コルソン合金製ジャック、特殊な高純度無鉛ハンダの使用、国産のシープスキンと低反発ウレタンでできたイヤーパッド。
これほど盛りだくさんに特別な素材と部品で構成されたヘッドホンはかつてなく、小さなメーカーでは開発は無理だろう。もし中小メーカーが少量生産でこのヘッドホンを製造し売ることができたとしても、単価は50万円を大きく超えることになっただろう。やはり大メーカーが本気を出さなければできないことがある。
Grado GS2000e:
開放型ヘッドホン。コンパクトなドライバーを二種類の木材を組み合わせた小型のハウジングで包み込んでいる。外側をマホガニーと内側をメープルで、という組み合わせは新しい。普通はヘッドホンのハウジングは一種類の木材で作られるものだ。音漏れはかなり激しい部類。ドライバーは新型であるが、PS1000に搭載されていたものと大きく異なる印象はない。Z1Rに比して技術的なフューチャーは明らかに少ない。むしろシンプルであることで、多くの要素が干渉しあう複雑性を回避し、結果として加工感のないストレートな音、生々しいサウンドへとつながっていくことを目指しているのかもしれない。

・装着感について
SONY MDR-Z1R:
イヤーパッドは国産のラムスキンで低反発ウレタンを縫い包んで製作されている。形状は多数の人間の頭部の3Dスキャンデータを基にしてデザインされているとのことだが、実際の装着感もかなり良好。ピタリと側頭部、頭頂部にフィットして、頭を振ってもほとんど動かない。側圧は高くも低くもなく丁度良い。重さはそこそこ感じるので、長時間のリスニングで首や肩に疲れを感じる可能性はあるが、LCD-4などと比べればはるかに楽なので、心配はしていない。
Grado GS2000e:
極めて軽いので、長時間装着しても疲労感はない。ただし、スポンジのイヤーカップやヘッドバンドにヒトの頭部に沿うような形状の工夫がほとんど見られないため、装着感自体はそれほど良くない。頭にピタッとフィットする感じではない。側圧は緩め。
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・機材の技術的なハイライト・位置づけについて
SONY MDR-Z1R:
日本の大家電メーカーが本気を出して最先端のヘッドホンを作るとこうなる。ふんだんに新技術が投入され、音響家電の領域で薄くなりつつあるSONYの存在感を、スマートかつ贅沢な物量投入という手法で取り戻そうとしているかのようだ。具体的には高級感・装着感を徹底的に追求したうえで、密閉型でありながら開放型のような高音質を目指したというところか。
Grado GS2000e:
同社最高級シリーズであるステートメントの最新鋭機という位置づけであるが、最新という感じはなく、むしろ昔ながらの手法を踏襲しつつ発展させたという印象。二種類の木材をハイブリッドしたハウジング、新型のドライバーぐらいしか、真新しさがない。逆に言えば偉大なるマンネリズムにGRADOファンは安心すべきだろう。

・パッケージングについて
SONY MDR-Z1R:
シリアルナンバー入りの革張りの立派な箱に収まっている。今まで様々なヘッドホンの箱を見てきたが最上級のひとつである。この箱は普通に作れば一万円以上はするはずだ。ただしこの箱は皮革を用いたものなので、良い状態を維持したいなら定期的な手入れが必要となるかもしれない。
Grado GS2000e:
相変わらず、段ボール製の粗末な箱を使っている。一応、別売りでロゴ入りの立派な木箱もあるが・・・。二つのメーカーのモノに対する姿勢の違いはここにも表れている。


The sound 

・ダイナミックレンジの広さ:
SONY MDR-Z1R >GRADO GS2000e 。
MDR-Z1Rは微弱な音を良く拾うので、スピーカーではやや難しい、粗探し的な聞き方も簡単にできる。振動板が大きいわりに大音量でも歪みにくいようだが、今回の試聴では音量をかなり上げるとちょっと苦しそうな音も出していた。もっともこれは本当に駆動力のあるRe Leaf E1などのアンプでドライブしたわけではないので、手元に届いたらリケーブルして後日改めてテストしたい。GS2000eは小さな音も比較的よく聞こえるが、MDR-Z1Rほどではない。そういうディテールに入ってゆく聞き方をすべきヘッドホンではなく、音楽全体をリラックスして俯瞰するような音調だから、ないものねだりだろう。また、GS2000eは音量を上げすぎると音割れが起きやすいので注意すべき。

・周波数帯域の広さ、帯域のバランス:
SONY MDR-Z1R >GRADO GS2000e
MDR-Z1Rはカバーする帯域が広いうえ、各帯域の音はバランス良く、公平に耳に入る。優等生的な出音。高域の自然な伸びは印象的である。低域の音階の表現も正確。
GS2000eも中域にアクセントがやや強いけれども、概ねフラットな帯域バランスを持つ。だが予想どおりMDR-Z1Rほどのワイドレンジ感はなくて、その点ではごく普通のヘッドホンという印象。低域の解像度もやや甘い。ただ高域のヌケの良さはZ1Rを上回り、これが演出するカラッとした開放感はGS2000eの独壇場。

・音の解像度:
SONY MDR-Z1R >GRADO GS2000e
MDR-Z1Rは一聴してややフワッとした柔らかめの音調であるため、ソフトフォーカスのように焦点が若干合わない音に聞こえがちなのだが、適切なアンプでドライブして聞き込むと音に濁りがなく、透明感の高い音を持っていることが分かるはずだ。音の肌理がかなり細かく、高精細な動画を大画面で眺めるような雰囲気がサウンドに宿る。視覚的に音を聞くという立場から言えば、MDR-Z1Rの音の解像度は十分に高いと言える。ただEdition9などの解像度の高さを売りとするヘッドホンのような音像提示はしない。例えば(Z7もそうだったが)どうしても僅かに音像の輪郭が甘く感じられる時がある。Edition9は決してこのような甘い音は出さない。
別な言い方をすれば音像の輪郭の解像度を高くすることに固執したり、あらゆる細部を明確に暴き出すことに重きを置いたりするようなヘッドホンではない。そこにだけ頓着しているわけではなく、もっと音質全体にバランスの取れた優秀さを目指しているのだろう。
一方、GS2000eは音像の解像度を上げることにこだわりがない。音の細部よりも、メロディの流れやリズムの弾みがより分かりやすくなるような方向に音調を振っているので、音の枝葉末節に拘りたい方にはお薦めできない。

・過渡特性(トランジェント):
GRADO GS2000e > SONY MDR-Z1Rとなる。
GS2000eは音楽の動的な要素に対する追従性が高い。立ち上がり・立下りのスピードが速い。能率が高いせいか、ヘッドホンアンプを変えても、軽い振動板を強力なアンプで駆動しているイメージは保持される。軽々と速い音が出る。このフィーリングはヴィンテージの高能率スピーカー、フルレンジ一発を聞いているようだ。対するMDR-Z1Rは複雑なネットワークを背負った、能率の低いユニットを鳴らす現代のハイエンドスピーカーのようなサウンドである。Z1Rは新型のDAP、NW WM1Zに直挿しでデモされることが多い。あの状態でもスピード感はそこそこあるが、音に軽みまでは出てこないし、音がやや暗い。おそらく、これは強力なヘッドホンアンプを必要とするヘッドホンではないか。逆に言えば、真価を発揮できていないのに、あれだけの音が出てしまうのだからポテンシャルはかなり高い。

・音色・音触の鳴らし分け、各パートの分離、定位の良さ:
SONY MDR-Z1R =GRADO GS2000e
各パートの分離がいいのはMDR-Z1Rの方である。定位はどちらも同じくらい良い。様々な楽器の鳴らし分け、録音の年代の違いを細かく出すことについてもほぼ同等だが、GS2000eの表現の巧さが際立つ。GS2000eはJAZZの古い録音を聞くと、なにかうまくハマっていて、楽しい。当時風の雰囲気が出やすい。このような録音をMDR-Z1Rで聞くと綺麗聞こえ過ぎてつまらないと思う。録音の年代の違いを上手に鳴らし分けるというのは、昔の録音の悪さも伝えつつ、上手く楽しませることなのだ。

・音の強弱の階調性:
SONY MDR-Z1R >GRADO GS2000e
MDR-Z1Rは音の強弱のグラデーションがかなり細かく滑らかに出る。色彩感はGS2000eにやや劣るが、この階調の豊かさは今まで聞いたヘッドホンの中ではトップクラスだと思う。GS2000eに関してはこの音の強弱の表現がやや粗い。これは古いJAZZやヘヴィメタルの再生では迫力となって現れるが、多くの優秀録音では弱みでしかない。

・サウンドステージ:
GRADO GS2000e ≧ SONY MDR-Z1R
MDR-Z1Rは音のヌケは優秀な開放型ほど良くないのに、音場に自然な広がりが感じられる。密閉型と称するヘッドホンの中で最も音場が広く感じられる。耳が詰まったような感じがかなり少ない。またその音場の静けさは特筆すべきもの。この背景の静けさの深さと音場の広がりが、振動板の大きさから来る鳴りの良さをいっそう強く意識させる。
このヘッドホンの鳴り・音の響きの良さと正確さは多くのレビューでスピーカー的という評価を得ているが、私も賛成である。このスピーカーライクなサウンドはヘッドホンのブレークスルーであろう。
一方、典型的な開放型であるGRADO GS2000eでは当然のことながら、さらにオープンな音場展開となる。音が頭の周囲空間に大きく広がるような感覚で、窮屈さがまったくない。しかし音場の静けさについてはMDR-Z1Rほどではない。

・音楽性(感情的な表現の分かり易さ):
GRADO GS2000e > SONY MDR-Z1R
リズムの躍動感やメロディの流れの表現についてはGS2000eの方が分かりやすい。MDR-Z1Rの音の描写は分析的で冷静であり、良くも悪しくも日本的な真面目さを感じる。音楽を聞いていて、楽しかったり悲しかったりする感情の動き、曲想がGS2000eの方が把握しやすい。

・総合評価:
密閉型・開放型ヘッドホン全体を通して、最もメジャーな名機としてSennhiser HD800/HD800sが思い浮かぶが、使いようによっては、その盤石の地位をも危うくしかねないニューカーマーとしてMDR-Z1Rを推したい。もともと欠点が非常に少ないうえ、堂々とした音の響き、音場の静けさや広がり、解像度、カバーする帯域の広さ、過渡特性の優秀さなどに目を見張るものがある。ここに音像の輪郭の明瞭さが加わればさらなる高みを目指せるだろうが、そこはアンプやリケーブルで解決できる問題かもしれない。ブリスオーディオのリケーブルは魅力的だろう。また、新発売される各社のフラッグシップ機の多くが開放型を選択する中、高級な密閉型ヘッドホンの不足がささやかれていたが、そこに上手く付け込んできた点も見逃せない。(繰り返すが、本当にこれを密閉型と言い切ってよいのか疑念は残る)

GRADO GS2000eについては、個々の評価のポイントを取り出して別々に検討してみるとSONY MDR-Z1Rに劣っているように見えるが、その結論はトータルの印象を反映していない。GRADO GS2000eには量的に測れない独特のキャラクターがあり、それが唯一無二の魅力だからだ。全体の外観、触れてみた質感、音のまとめ方の巧さを見ていると、そういう思いは強くなる。このヘッドホンはそもそも追求しているものが、現代の多くのハイエンドヘッドホンとは違う。この軽さ、オーガニックな手触り、ヌケが良くカラッと乾いて屈託のないビッグサウンド、これらはアメリカンヘッドホンの良心としか言いようはないではないか。このような特別な気持ち良さ、あえて競争を避けているような呑気な姿勢は、私を微笑ませると同時にリラックスさせてくれる。
また、ヘッドホン本体の重さというごく単純な数値が、ヘッドホンの音質に大きな影響を与えていることを今回改めて感じた。GS2000eのサウンドは腰がやや高く、フットワークが俊敏、軽妙にして快活。低域の沈み込みがやや浅いものの、それを含めてトータルの音調は実に明るく清々しい。秋晴れの空のようなサウンド。例えばLCD-4はあれだけ軽い振動板を強力なパワーで駆動する力がありながら、このようなライトなキャラクターになっていない。これはヘッドホン全体が重いせいではないか。重いヘッドホンは音の重心が過度に下がって暗い音になりがちだが、現行のLCD-4はその罠にはまっているような気がする。

同じ価格帯にありながらこれらの二つのヘッドホンほど、対照的なモノもないだろう。かたや数値データをもとに理詰めで開発されたモノ、かたや聴感と伝統を大切にしながら大らかな気持ちで作られたモノ。外観もサウンドも重なり合う部分はほとんどない。これらが並存しうるほどヘッドホンの世界は広がってきた。


Summary

あのバンドブームの最中、日本中で多くのインディーズバンドが結成され、各地のライブハウスを盛り上げていた。そのころは既に大手プロダクションが育てたメジャーなタレント、歌謡曲や演歌、アイドル系の歌手がテレビを賑わしていたが、インディーズバンドはそのカウンターパートとして薄暗いライブハウスの中から勃興してきたのである。これは今、スピーカーオーディオというメジャーに対して、ハイエンドヘッドホンというジャンルが興ってきたこととイメージが重なる。
そういう時代の流れの中で結局、メジャーの世界に取り込まれ、そこで活躍の場を広げていった二つのバンド、Mr.Childrenとスピッツについて、ここで多くを語る気はないが、それぞれが辿った道が異なっているのは周知の通りだ。片方は大きなハコを好み、他のメジャーなアーティストとのコラボを求めたあげく、ますます大きな存在となって、一時はサザンの後を襲うかのような勢いさえあったが、今は一段落している。もう片方は幾分小さなハコを好み、アルバムもあえて多くを売らず、固い核を守ろうとするかのように小さくまとまる素振りだ。今でも両者はイエローモンキーのように開散もせず、シーンに居残っているわけだが・・・・。
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手をかえ品をかえて発表される野心的なヘッドホンたちの群像は、次々とデビューする新人バンドのように私の目には映る。今回の試聴というのは、そういう状況下で、もはや老舗となったSONYとGRADOが放つフラッグシップどうしの対バンが企画されたようなものだ。Mr.ChildrenがMDR-Z1Rであり、スピッツがGS2000eにあたると私は見ているのである。この二つのバンド=ヘッドホンの織りなすコントラストは時代を超え、趣味のジャンルを横断して、私の好奇心を未知の領域へトリップさせてくれる。

かく言う私がSONY MDR-Z1RとGRADO GS2000eを予約したのは自然な成り行きだった。まるでMr.Childrenとスピッツの対バンを行きつけのライブハウスで再び見るために高価なチケットを買ったような気分だ。少々値は張るが、この熱いヴェルサスを自分のヘッドホンアンプ、自分のDACで体験しない手はない。こいつらでロビンソンでも聞き比べるとするか。昨日貰ったRADWIMPSのCDを聞いてもいい。あとはこの散財が後悔しない買い物になることを祈るだけだ。

by pansakuu | 2016-09-29 23:55 | オーディオ機器