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Hailey1.2を眺めながら

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つくづく思うのだが、
私のような都会に住む忙しい人間には、
高価なスピーカーなんてものは無駄じゃないのか?
今、手元に置いて試用しているYGのHailey1.2を眺めていると
そういう思いが込み上げてくる。
ここのところ、ずっとそういうことを考え続けている。

最近の私は週日、朝早く出掛けて、夜遅く帰ってくる。
つまり、このスピーカーを存分に聞けるのは上手く行って日曜の昼間だけである。
フルに休みを使えても実質、週に10時間前後である。
しかも隣近所の迷惑があるので、そんなにデカイ音は出せない。
こいつは思い切り音量を上げた時にその真価を発揮するのだが・・・。
とはいえ、クレームが来やしないか、
ビクビクしながら音楽を聞くのは御免である。
事実として、一軒家を立てた後の方が、
マンション住まいだったときよりも騒音の苦情が増えたというオーディオファイルもいる。
防音室がないと安心はできない。

しかし、何度か述べてきたように私は防音室が苦手である。
窓のない部屋、窓の小さい部屋が元来苦手なのである。
あの閉塞感には馴れることはない。
ついでに重いドアも困る。単純に開け閉めが辛い。
だから防音室は建てない。
そんなに広くなくていいので、
家族の行き来するオープンなリビングで寛ぎながら音楽が聴きたいだけだ。

この状況で、
600万のスピーカーを買っても
宝の持ち腐れに近い気がするというのはこういうことだ。
時間当たりの音楽を聴くコストを私は考えるのである。
例えば、この調子でスピーカーオーディオをやっても
一年に400時間あまりしか聞けないことになるが、
一年でスピーカーに払った代金の元を取りたいなら、
600万を400時間で割るわけで、
一時間あたり一万円以上かけていることになる。
無論、スピーカーは少なくとも2年は使うわけだから、
まあ一時間当たり7000円くらいまでの使用料に下げられるかもしれないが、
それでも、音楽を聞く対価としてはどう考えても安くない。
それにこれはスピーカーについてだけの話で、
アンプも同様のことが言えるので、さらに金額は加算される。
また、一週間の大半はリビングに
大きなスピーカーが無意味に陣取ることになる。
これも我慢できない。
こいつは音を出していなければ、
ただの真っ黒くて重たいオブジェにしかならない、邪魔っけな道具である。
スピーカー本人にしても暇を持て余しているような気分だろう。
週末しか、お呼びがかからないのだから。
Hailey1.2は、これはこれで確かに音はいいから
300万くらいなら我慢する、許せるのだが、
(でも能率が低いのはかなり困るな。アンプの代金も半端ない。)
こいつは600万円を超える機材なのである。

とにかく、いろいろと考え始めると
高価なスピーカーというものは、自分に合わないような気がしてくる。
こうなるとヘッドホンの方がよほど気楽である。
家人が静かに勉強をしていても、お構いなしに聞けるし、
徹夜で聞き続けても誰もクレームしない。
したがって毎日のようにコンスタントに聞ける。
どんなに高価なヘッドホンシステムを組んでも、
一時間あたりの対価はスピーカーシステムよりもかなり小さくなる。
またスピーカーシステムに比べて圧倒的に小さく場所を取らない。
また幾つものシステムを並列して設置し愉しむことも容易であるなんてことは言うまでもない。

だが、ヘッドホンシステムは
最重要事項である音質について
最近まで、ずっとスピーカーシステムの後塵を拝してきた。
だから、どうしてもスピーカーは必要だった。
しかし、今やハイエンドヘッドホンシステムの性能は
スピーカーと比肩できるところまで上がって来たように思うと何度も唱えているし、
それに対して、最新スピーカーの能力は
頭打ちに近い状態であるということもたまに言っている。
確かに、新型スピーカーを聞くと、測定値に出るような表立った部分については、
昔のものよりも良くなっているのだが、
その分、以前のスピーカーが持っていた愛すべき個性、独特の味わいのようなもの、
あるいは絶妙なバランスの良さが失われているような気がしてならない。
これでは結局、差し引きゼロの状態ではないか。
何かを得たが、何かを失っている。
一方、ヘッドホンに関しては、いまところ、単純に得たものの方が大きい。
つまり伸び盛りのジャンルなのである。
黄昏のスピーカーオーディオと旭日のヘッドホン・イヤホンオーディオ。
このギャップはとても大きい気がする。

こういうギャップに若い人たちは敏感だし、直感が鋭い。
そして合理的である。
だからヘッドホン・イヤホンの方に集まってくる。
そっちの方が伸びているし、素直に面白いし、合理的だからだ。
この人気が金銭的な問題のみに起因するものでないのは明らかである。
今や本当にハイエンドなイヤホンシステムを揃えるほどの財力があれば、
大きくはないが、気の利いたスピーカーシステムを揃えることは可能であるのを、
彼らは承知している。
でも、それでは全然、気分が盛り上がらないから、
あるいはどんなシュチュエーションでも楽しめろわけじゃないから、
ヘッドホン・イヤホンに大きな投資をするのだろうか。
私はよく知らないが、結局そういうことになっている人もいるらしい。

そういう私は夜な夜な、
NAGRA HD DACとRe Leaf E1x、HD650 Golden era MKを召喚し、
音楽の迷宮への出入りを繰り返す。
そこで様々なシンガー、様々な音たちに出会い、奴らと火花を散らす。
そのデジタルファイル、LPに隠された滋味を味わいつくしたら、
そこを立ち去り、また次の音楽と出会う。
オーディオファイルとは音の機械獣の召喚者であり、
彼らを使役して音楽の女神を狩り、食らうハンターのような者たちだ。
その神聖な用途に、私のヘッドホンシステムは
いままで使ったどのスピーカーシステムよりも向いているような気がすることもある。
これはかなりコンパクトなシステムだが、
さらに高価なHE-1に勝るとも劣らない、魅惑的なサウンドをいつも奏でてくれるし、
どんな静かな夜でも私の気まぐれに付き合ってくれる道具なのだ。

世話してくれた方には申し訳ないのだが、
私は明日にも、このYGのスピーカーを流してしまうかもしれない。
次はまたピエガに戻るか、マジコに行くか。
もしかしてZellaton?
はたまた、
デザインが楽しいVividに行きたい気分もあるが、
あの横っちょウーファーはこの部屋で大丈夫だろうか。
様々な考えが頭の中に渦巻いていくのだが、
その背景には常に、
今、スピーカーでオーディオをやるって本当に面白いことなのか?
という倦怠感にも似た深い疑問が居座っている。
それは、ヘッドホンやイヤホンが発達した現代においては
ハイエンドスピーカーなんてものは
無意味に難儀で不自由なだけなんじゃないかという疑問と重なる。
そして、
その疑問の向こう側には、
手の込んだヘッドホンシステムがあれば十分ではないか、
という消極的な解答があるのではない。
ヘッドホンシステムに投資する方が明らかに面白いし、
恐らく今の自分にとっては険しいけれど新しい道なのだという確信がそこに生まれつつある。
それは私が望んでいないことだったかもしれない。
考えたくもないことなのかもしれない。
だが、砕け散ってもいいから、そっちに歩いて行きたい。
そういう強い誘惑がある。
スピーカーに未知の音を見つけられなくなってから久しいのだから、
当然といえば当然か。

では自分のヘッドホンシステムを私はどうすべきだろうか。
Sennheiser HE-1についてはアンプ部が明らかに役不足だ。
このシステム単体では600万の価値はまだないから、
強力なDACや電源ケーブルをかませたりして底上げしなくちゃならない。
こいつを候補から外したわけじゃないが、乗り気にまではなってない。
それに、未聴だが、MSB Select DACと
STAXヘッドホン向けのアンプユニットも魅力的ではある。
問題は流石に高価すぎること。1700万円はすぐには出ないし、
STAXにしか対応しないのもつまらん。
アレはとにかく試聴しないと、どうしようもないのだが、
代理店様がヘッドホンオーディオに関心が無さそうに見えるので、
もしかすると日本では聞けない機材になってしまうかもしれない。
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それにひきかえ、
ステンレス製のRe Leaf E1pの鏡面仕上げのコース、
Fostex HP-V8とBispokeのプリ、TA300Bを組ませるコース、
GOLDMUND THA2を電源ケーブルやインシュレーターで
ドーピングするコースなんかは
HE-1やSelect DACよりも、ずぅーっと安上がりだが、
多少は面白い結果が得られることだろう。
これらにFocal UtopiaやGrado GS2000eなど
最新のヘッドホンを合わせて愉しむのがよかろうか。
(GS2000eの方はそのうち手に入りそうだが・・・・。)
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黒光りするHailey1.2を眺めながら、
私はあえて、このスピーカーのレビューを書かないことに決めた。
このスピーカーの音質が悪いのではない。むしろ素晴らしい。
それなのにあえて書かないのだ。
スピーカーを飽きるほど聞いたとは到底思えないし、
そんな境地に達したと思いたくもないのに・・・・。
単なる一時の気まぐれなのかもしれないが、
それほどまでに私は、
スピーカーという、
どこか時代遅れにさえ見える難物に興味を失い、
ヘッドホンというガジェットにオーディオの新たな希望を見出している。

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by pansakuu | 2016-08-09 23:15 | その他