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Big Wave:2015年秋のヘッドホン祭りについての私的インプレッション:第一部


十傑集がその気になれば・・・
by白昼の残月


Introduction

2015年・秋のヘッドホン祭りほど話題の多かった祭りは、かつてなかったような気がする。聞くべきものが今回はとても多かった。
いままでこれほど長く会場に居た記憶もない。二日間、合計で約12時間弱、会場をうろついていた。万策堂が実際に買うのはハイエンドヘッドホン関係の機材に限られるので、それだけ聞きに行けば良かったのだが、一回聞いて終わりというものは少なかったので、それらを全部聞き終えるだけでもかなりの時間を要した。今回は多くのヘッドホンメーカーあるいはアンプメーカーのフラッグシップ機がバタバタと更新され、それら全てを十分に試聴するのに大変骨が折れた。出品物はどれも力作揃いで、いつもの祭りの倍以上の時間をかけ、あるいは時間を分けて、ひとつひとつを詳しく聞いた。というか、聞かざるをえなかった。勿論、イヤホンについても目ぼしいものは聞いたので、さらに時間が伸びた。さらなる疲れの要因として、重要なヘッドホンアンプが何故か会場に来ず、という事態がある。例えば二子玉川なんぞに引っ込んでいたアンプもある。記憶が薄れないうち、ほぼ同時試聴して比較する意味で、会期中にそこにも出向いた。何故、中野まで運んで下さらなかったのか?そのせいで私はますます疲労困憊したのである。まるで台風の大波の中でサーフィンをしたような気分だった。とはいえ本当にヘッドホン・イヤホンオーディオのBig Waveが来ているのだから、やるしかなかった。

こうして私にとって大切で大変な祭りが終って、私がマークしたフラッグシップクラスのヘッドホンは計8機種であったが、間違いなく自分が買うだろうと言えるようなものは残念なことに1つもなかった。全ての機種のどこかに買わない理由がある。その中でも全ての点において最も上手くバランスが取れていたMrSpeakers Etherでさえ、買うかどうかはあやふやである。それはLCD-4があるからなのだが、理屈については後に詳しく述べたいと思う。

ここでは、まずこれらの旗艦格のヘッドホンについて簡潔に、独断と偏見に満ちたインプレッションを並べよう。次にジャンルごとに比較してテキトーに論じてみたうえ、対になる可能性のあるGOLDMUND THA2とRe Leaf E1、FostexHP-V8などのハイエンドヘッドホンアンプの比較インプレッションを簡単に述べよう。そして全体の感想を述べて締めくくるつもりだ。長くなるので二部構成になる。
(写真はいくつかのHPから拝借いたしました。どうもありがとうございます。)


Exterior , feeling and sound
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1.Sennheiser HD800s
外観:
一見するとHD800を黒く塗っただけの色違いバージョンにしか見えない。だが良く見ると、部品のエッジの立ち方が若干パリッとしているように見え、形は同じだが、新たな金型を使って部品が製作されているようである。精悍な印象であり、黒いヘッドホンアンプに合わせたくなる。内部構造は新規の部品によりダンピングが強化されて、特性が改善されているとのことだが、外観や重さに明らかな変化はないようだ。
装着感はHD800とほぼ同様であり、区別できない。ハイエンドヘッドホンの中では一、二を争う装着の良さである。音漏れは前モデルと同様で大きい。

音質:
一聴すると、HD800の特徴である聴空間の広さが僅かに失われ、音場が若干狭まったように感じられる。だが、HD800の音場の広さというのはHD800のハウジングの構造や材質、容量によって、演出されていたところがある。これは同じ音源を、優秀なヘッドホンアンプを用いて多くのヘッドホンで鳴らすと分かる。この演出の一部が巧妙なダンピングにより消えた、あるいは控え目になってより素の音に近くなったのだと思われる。結果的に音像の定位が良くなり、音のエッジはクッキリして全体を把握しやすくなった。高域がしっかりして厚みが出ており、中域・低域も音の密度が若干上がっている。どこかDMaaのチューニングを連想させる音。いわゆる空間型の出音からやや音像型にシフトした印象。もっとも型番を900にするほどの変化ではなく、マイナーチェンジであり、これで販売価格が大幅に高くなると購買意欲は失せる。
また、従来のHD800が不要になることはなく、音楽の音作りや曲想に合わせてHD800とHD800sを使い分けてもいいように思う。
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2.Audeze LCD-4
外観:
ミステリアスだ。ヘッドバンドはカーボン製になり、ハウジングは一部メッキがかかっている。また、ヒンジの部分にロゴが入っている。依然としてややモッサリして野暮ったいように見えるが、どこか只者でない鋭さも感じる。形全体には先代モデルたちと比べて大きな変更はないが、少しピカピカしてスペシャルモデルであることを演出しているようにも思う。
装着感については重すぎるとしか。カーボンパーツを使っていながら、この重量は何だい?イヤーパッドは分厚く、頭部のサポートも改善されているが、如何せん、こんなに重いと聞く前に落第点を付けたくなる。1.5テスラのネオジウム磁石を載せたせいなのか?側圧も、ちと強いが、この重さではそうでもしないと保持できないだろう。毎日、数時間連続してこれを使うと頭頚部の筋肉の疲労が大きく、整形外科的な問題が起こることは間違いない。sonorous Xについても言えることだが、ヘッドホンは服や帽子のように身に着けて使う道具なので、この部分が完備していないと、音がいくら良くてもダメだと思うことがある。

音質:
およそ今まで聞いたどのヘッドホンよりも充実した出音である。これは平面駆動型らしい繊細で透明感のある中高域にダイナミック型に類似した力強く緻密な中低域が合わさって、いままで聞いたことの無いような優れたサウンドが得られている。帯域バランスはほとんどフラットに近いか?若干、中低域にウエイトが乗っているか?こんなにたいそうなヘッドホンだが、意外にも小さなポータブルのデジタルオーディオプレーヤーで十分に駆動できる。折角なので、もう少し駆動力のある適切なアンプを充てるとさらに躍動感のある闊達なサウンドが得られた。1.5テスラのネオジウムマグネットの威力なのか、この方式ではありえない音の力強さがありながら、精彩感も横溢している。しかも音に濃密な味わいさえもプラスされている。平面駆動型のヘッドホンに常に足りないと思ってきたものがだいたい補完されている。ダイナミック型の高テスラを誇るドライバーを搭載するヘッドホンでもこれほど躍動的で濃密にはなかなかならないだろう。基本的に大変にリッチな音楽性のある音でありながら、解像度やダイナックレンジ、空間性などの基本的な音質の評価項目を高いレベルでバランス良く満たす。従来のLCDシリーズはどのモデルもどこかにクセがあった。高域が伸びない、中低域がファットだ、中域の密度がこのモデルだけ低いなど。しかしLCD-4はどちらかというとクセの少ないフラットな出音で、音を盛る傾向は少ない。今までハウジングの材質もコロコロ変わって、どれがいいのか分かってないようだった。今回は硬くて重い黒檀に落ち着いた。聞くところによれば、最近まで意外な人がAudezeのサウンドアドバイザーをやっていて、その人のアドバイスで音が良くなってきたという噂だが、どうなのか。とにかく極めて高価格だが、その価格が納得できる音。それだけに、この装着感は惜しい限りだ。他機との比較については後で述べるが、結論を言えばHE1000を焦って買わなくて良かった。
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3.HiFiMAN HE1000・EditionX
外観:
洗練された美しい局面で構成されたハウジングであり、ウッドとアルミのハイブリッドである。仕上げに日本製の高級品のような精密さがやや少ないが、全体のデザインやヘアライン仕上げは悪くない。
装着感は軽くもないが、重たいということはなく、合格点。長時間の使用に十分耐えるだろう。
例えば、このジャンルの先行製品の一つであるJPS Labs Abyssと比べるとはるかによく出来ている。
SR009と似た装着感である。

音質:
LCD-4がなければトップのサウンドであったはずだ。音質で比較して先行のAbyssやSR009よりも優れている。ヌケが良く空間性を強く感じる音であり、その広大な空間の中を音楽が爽やかな風のように吹き抜けてゆく。解像度は高いが軽い低域、明るく澄んだ中域、スッキリと伸びきるスマートな高域。全帯域はバランス良く分布して、強調される部分がない。総じて破綻のない美音だが、全体にやや明るく、音が軽すぎる。例えば悲壮感や憂いを伴う音楽、重いビートが連続する音楽に合わない。LCD-4はこのような曲に十分に対応する。それからEtherにもある程度言えるが、音圧感がこのヘッドホンでは全く分からない。音圧も音楽情報の一部なので、これが感じられないのは困る。またHE1000はドライブするアンプが限られる。正直、聞いている私の中では、どんなアンプをつないだにしても、こいつの実力は本当にこれだけなのか?という疑問がいつもある。最近MOON Neo 430HAで聞いてみたが、音量は十分に取れるものの、音量を上げると、音が硬くなってしまう。やはりTHA2につないで聞いてから評価を考えたいところはある。一方のLCD-4は恐らくアンプはそれほど選ばない。とにかくHE1000を十全に駆動する最適なゲイン、パワーをもつHPAが必要であることは、大きな欠点。

なお、同時に出ていたセカンドモデルのHiFiMAN EditionXの外観は黒いHE1000というところ。ピアノブラックのようなツヤありの仕上げが全面になされている。とてもエレガント。装着感はHE1000とほぼ同様だが、音質はジュニア機のそれで、僅かに音場が狭くなり、音像の描写もやや甘くなる。HE1000より駆動しやすいようで、同じアンプでもEditionXの方が音量が取りやすかった。これなら大抵のアンプできちんと聞けるだろう。音質を取るか、価格・駆動しやすさを取るかだが、音質で勝るLCD-4がある以上、音質を優先して駆動のしやすさ犠牲にしたHE1000より、むしろEdition Xの方がお得感があるかもしれない。
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4.MrSpeakers Ether
外観:
HD800sや後述のDharmaのように洗練されたデザインではない。やや武骨でカラーセンスが良くない。普通の金物屋にありそうな特殊な印象のない金網のようなもので覆われたハウジングの外側。サイドの簡潔な円筒形の形やレッドリムにも美しさまでは感じない。ツヤありの塗装がされてはいるが、質感は全体にやや雑にも感じた。ただしケーブルのコネクターはしっかりしていて好感が持てる。その部分はMaster1などとはかなりの違いだ。装着感も悪くない。軽くもなく重くもないが頭にかけた時のバランスは良い。デザインでなく音質で勝負、機械的な耐久性も高そうな実用本位のアメリカ製品なのだろう。

音質:
欠点が少ない。全ての音質要素がバランス良く配合された落ち着きのある音。見通しが良く繊細であり、低域を中心に音の輪郭がキッチリと描けていて、曖昧さはない。ハウジング内で音が散らず、音場はHE1000ほど広大でないが、自然な広がりを聞かせる。いくつかのアンプで聞いてみると各パートの分離が良く、音が決してダマにならないことにも気付いた。やや美音系に傾くがモニター用ヘッドホンのような正確さもなくはない。平面駆動型の長所である、音のアタックがキツくならない美点も強調されているが、音楽の躍動を過不足なく伝えてくれもするし。平面駆動型にありがちな単純にサラサラした気持ちのよい透明な音に終始しない。多彩な魅力を持つ。これはSR009を代表とする従来の平面駆動タイプのサウンドの最高位に位置する。だが、残念にもHE1000やLCD-4のように、その枠を完全に飛び超えるような音までにはなっていない。
ただし、その価格を考え、駆動のしやすさ、アンプを選ばないことまで考えると全体としては新参のHE1000やLCD-4、そして定番のSR009に勝るかもしれない。
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5.MrSpeakers Ether C:
外観:
複雑な形状のカーボン製のハウジングを持つヘッドホン。カーボンハウジングは高価で特殊なため、音に効くと考えられても、実現させたメーカーはほとんどない。それをやり遂げたことには拍手。だが、このハウジングは磨きがやや足りず、カーボン繊維の持つ美しさが十分に出ていなかった。どうせやるなら、もう少し高くなってもいいので、このカーボンハウジングをさらにブラッシュアップするべきだろう。(エルメスのカーボントランクやカーボン製のベアブリックなんかを見ると仕上げの良し悪しが分かるようになる。)
装着感はEtherとほぼ同様で問題ない。当然ながら音漏れはEtherよりもかなり少ない。

音質:
Etherを聞いた後に聞くと、当たり前だが、やや籠って聞こえる。音場はEtherより明らかに狭く感じられるが、密閉型のライバルであるTH900やEdition5と同等の以上の広さは確保している。一般にカーボンを使った製品には独特の音の個性が端々に聞かれると思う。すなわちカーボンを多用すると、音が整理され、背景の静けさが増す。サウンド全体がフラットで重厚になるが、躍動感が若干削がれ、音が跳ねなくなる。まさにEther CはEther の音に上記の修飾を加えたような音である。好みの問題ではあるが、私はこのサウンドをあまり面白いとは思わなかった。特に躍動感がEtherはもちろん、今までの密閉型のキングたるTH900に及ばないように思ったからだ。私が経験上、カーボン製の製品の音を好まない傾向があるにしてもTH900の方が音のまとめ方が少しだけ上手く行っているように思う。
EtherとEther C。
この二卵性双生児のようなヘッドホンを聴き比べると、密閉型で開放型を超えるような音質を得ることの難しさを思う。ハイエンドのヘッドホンは明らかに開放型が多いのだが、それは音場感の点で圧倒的に有利であり、ハウジングの影響が少ないため音もまとめやすく、また製造コストも開放型の方が材料費を低くできるからだろうか。何にしても、MrSpeakersはこの二機種をほぼ同価格で出したことは注目に値するし、STAXの密閉型4070亡き後、新たな平面駆動式の密閉型を渇望しているファンの要求に答えたことは敬意を表するべき。
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6.Final audio design SonorousⅩ
外観:
鏡面仕上げの金銀のコンビがデザインのハイライトだ。煌びやかなエクステリアであり、大変目立つ。部品のエッジが立っているように見えるが手を切るような雑な仕上げは皆無で流石の工作精度。やはり超高額機である。Finalの社長さんは高級時計のようなバリューのあるヘッドホンを作りたいと力説しておられたが、頷ける外観となっている。イヤパッドは普通以上に弾力があり、パツパツだが、その表面はしっとりして耳の周囲を密閉するかのように覆う。このパッドの内側には見えにくいがいくつか穴が開いており、音響特性をコントロールしているらしい。細かい技だが、この手法に関しては、例えばDMaaでも類似のアイデアを出していてFinalだけでやっているわけではない。全体に複雑なヒンジや調節機構などはなく、見掛けの豪華さにのわりに、ごく単純な構造である。蝶番のような部分を作ってもハウジングがあまりにも重たいので経年変化に耐えられそうもないからだろうか。
装着感はしっかりとしており、頭を多少振ってもブレがなく、頭頂部も痛くないようだが、なにせ重たいので長時間使うと首がおかしくなるのは覚悟しなくてはならない。経年変化で側圧が弱くなると、単純な構造だけに下を向いただけでズリ落ちそうで怖い。重たいので落とすと危ないし、鏡面仕上げに傷がつくかもしれない。

音質:
これはやや特殊なサウンドに聞こえる。その完成度は高いが、このサウンドを是とする嗜好の範囲が狭いのではないか。良い意味でも良くない意味でも、例えばG ride audioの製品に似て、“自分”を強く持っている。全金属製のハウジングだけでなく、オリジナルのドライバーであることも影響しているだろうか。音場は密閉型としては広く深い。が、なぜか見通しがあまり良くない。音像は極めて明瞭で、その解像度は申し分ないのだが、音像の周囲に霧のようなモヤモヤした雰囲気が漂っているような気がするからだ。何だろう?これは駆動力のないポータブルのDAPを使ったせいらしく、後日にFinalのショールームでQuestyle CMA800R(二階建てのモノラル使い)で、このヘッドホンをバランス駆動すると、このモヤッとした感じはなかった。この本来の音が出るセッティングでは音像についてはエッジがやや強く、色彩感が鮮やかで、内部に音の粒子がぎっしり詰まっているようで密度が高い。この音のエッジの硬さは高度な技術で製作されたドライバーを取り付けるアルミバッフルが効いているのだろう。やや重たくて陰影のコントラストの強い音でもあり、HE1000などの典型的な平面駆動型とは違う方向性である。奥に深い音場の中で、この独特の密度と彩度の高さのある音が流れる様は、油絵の名画を眺めるようで麗しい。このヘッドホンでしか聞けない音の現状がここにある。音の強弱の階調性は非常に細かく、定位も良い。だが、非力なアンプでドライブすると、なにか全体に音のレスポンスが若干鈍く感じられることがあり、ゆったりした横ノリのクラシックなどは合いそうだが、現代のポップスによくある、畳み掛けるような速いビートに似つかわしくないということになる。やはりパワフルな据え置きアンプが必須。低域はやや膨らんで量感があり、中域は濃密でややネットリした感じと明瞭さが同居する。高域は概ねナチュラルだが、金属的な響きが時に耳を刺したのが気になる。ハウジングの材質によるのか、あるいはエージング不足か。個人的には金属でない、生体素材でダンプをかけると、さらに音質が向上するはずだと思っている。
個々の音の要素のみについて着目すると出来・不出来があってバラバラな印象なのだが、それらが一つになった音を実際に聞くと、これはこれで悪くないと思わせる不思議なサウンドだ。やはり老舗の貫録というか、音のまとめ方・音作りが洗練されている。
前回の祭りでは、ここまで音がまとまっていなかったが、半年でかなり聞き易くブラッシュアップされた。しかし、音の本性はそのまま。いまだに音の重量感や陰影、色彩感に重心を置いた、威厳ある独特の音を出せるヘッドホンであることに変わりはない。
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同時に聞いたFinal audio design SonorousⅧついても少し。
外観:
Xで金属だった部分が一部は硬いプラスチックに換装されており、少し軽くなっている。このプラスチックは深いブラウンで表面は艶消しであり、鏡面仕上げの部分と美しいコントラストを成す。装着感はXよりも軽いので当然楽になっており、その点では下位モデルの方が優れている。
音質:
Xとはやや違う音質傾向である。適度な密度や重さ、しなやかさがある柔軟な音であり、基本的に明るく闊達な印象である。音場の広さはそこそこだが、密閉型として不満は感じない。音に重苦しさがなく、ビシビシとビートも決まる。だが、Xを聞いた後だと、どうも上滑りで軽い音に聞こえ、音楽の内容を掘り下げたり、音楽の骨格を大きく啓示したりする力に欠けるように思う。逆にXにはそのような抽象的な表現力が備わっているのが長所だろう。
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7.Enigma Acoustics Dharma D1000
外観:
前回の祭りに比べてかなりブラッシュアップされ、完成度が高まった。金網の部分に透かしでロゴが入ったり、金網のエッジを金属の枠で覆ったり、ヘッドホンケーブルの着脱の穴の周囲の仕上げがよくなっていたり。アームとヘッドバンドを連結するヒンジの部分もガタなくキチッと出来ているし、細部までデザインが行き届いている。例えばKuradaのヘッドホンのヒンジも良くできていたが、デザインまでは、手が回っていない。Dharmaにはそれがあるのだ。ブラックの艶消し塗装も綺麗で全体に精悍な印象を持たせる。Etherにもこれ位の作りの良さがあると良かった。
このヘッドホンはハイエンドヘッドホンとして標準的な重さであり、また、精密なヒンジのおかげでピタリと側頭部に馴染むので、装着感は良好である。

音質:
なんといっても唯一のハイブリッド型であり、外観や装着感も良いので、期待が高まるが、破綻のない普通の音という感じで、派手なアピールがない。少々肩透かしであった。すごく普遍的な音なのである。このヘッドホンはセルフバイアス静電ドライバーとダイナミックドライバーのハイブリッドとのことだが、この二つのユニットはシームレスにつながっており、全然つなぎ目がないように聞こえる。一つのドライバーで駆動しているようだ。伸びきった高域のシルキーな感触とレスポンスの良い中低域の適度な重さ。ワイドレンジなうえ、全帯域において高解像を確保している。だが、これだけ多くのフラッグシップモデルが一堂に会している中では、あまり存在感が出せていない。突出した音質的なメリットがない。それだけ純粋な平面駆動組の躍進が目立っているのだ。また目立ってない一因に純正アンプAthena A1が価格のわりにややショボいこともある。また、その上流のプレーヤーの音も弱かったと思う。前回の祭りだが、純正のヘッドホンアンプ以外でも聞いてみたことがある。その時の経験から言えば、純正のヘッドホンアンプにはこだわるべきではない。もっと高性能なヘッドホンアンプ、例えばNAGRA HD-DACのヘッドホンアウトで聞くと今までのはなんだったのか?と言いたくなるぐらいの良いサウンドであった。さらにワイドレンジ感が増して、伸び伸びとヘッドホンが歌っていた。
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8.beyerdynamic T1 2nd generation
外観:
前のモデルT1と比べて、ヘッドホンケーブルが着脱式になった以外はほとんど変化はない。ケーブル端子の着脱のロックはしっかりしており、Master1などのMMCXを使うモデルに比して信頼感がある。今回の祭りではリケーブルのしやすさを喜ぶ話が多かったが、T1 2nd genがその代表。装着感もほぼT1と同様。

音質:
若干音場が広くなり、よりクセの少ない音になった。だが、あまり大きな変化ではない。これからT1を買う人はこれを買うべきだが、リケーブルを指向しないなら、今までのT1を使い続けても問題ないと思われる。いままでのT1は若干、音が詰まったような、わずかにクセがある音だったが、十分に満足できるものだった。このような、音質的に大きな意味のない2nd generation化は、多く他社の新製品が出て来るので、埋没しないための対策ではないかとさえ勘繰る。

9.Fostex TH900 Mk2
このモデルは製品版としてはまだ出てきていないので、私の聞いた噂のみ。
beyerdynamic T1 2nd generationと同じく、ヘッドホンケーブルが着脱式になるのみで、それ以外に大きな変化はないらしい。つまり装着感も音質も大きな変化は無さそうなのである。
今回のMK2化は超弩級真空管アンプHP-V8の登場に合わせている部分が大きい。XLR4Pin端子へのリケーブルを容易にするための純正の改造作業、モディファイと言ってよいだろう。
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10.Sennheiser HD650 DMaa:
新しい情報として、HD650 DMaaの音の完成度を高めるイヤーパッドの改良・新規製造が検討されているようである。試作のイヤーパッドを装着したHD650 DMaaを聞いてみると密閉性を調節し音圧の逃がし方を最適にすることでより濁りが少なく、細部までさらに正確な音像を取得できるようになったようだ。DMaaは目指す方向、ベクトルが不変であり、真に正確で普遍的な音を追求している。コンシュマー向けとは言いにくい面があるが、こういう姿勢を貫く者は他にいない。しかも定番モデルの改造という極めてユニークな手法が面白い。このイヤーパッドの試作品を聞いて、私はDMaaの今後の展開への期待を益々強めた。これが製品化されたら、すぐに買ってしまいそうだ。

そして、第二部に続く。

by pansakuu | 2015-11-01 12:35 | オーディオ機器