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羽化するRe Leaf E1:Dela N1A、N1Z、Aurender S10を試す

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悠々として急げ
by開高 健


今年の梅雨時は居間でヤゴを飼っていた。
それまで自分でヤゴを育てたことはなかったので、当初いろいろと苦労はしたものの、
先日の朝方、無事にトンボに変身し、梅雨の晴れ間へ飛んでいった。

以前に蝉の羽化を見た時も少なからず興奮したが、
ヤゴが羽化してトンボになる様はもっと驚きであった。
そもそもヤゴというのは小指に乗るほどの小さな虫に過ぎない。
それが、或る夜、水辺の枝につかまって、突然に水から上がり、
その枝の天辺でトンボに変化する。
なんといっても驚かされるのは、大幅に形と大きさが変わること。
あの小さなヤゴのどこにあれほど長い胴体と翅が格納されていたのだろうか?
蝉よりも変容の振れ幅が随分と大きい気がする。
さっきまで水の底をはい回ることしかできなかった生き物に、
長い胴体が伸び、透明な羽が生えて飛び回るようになるのである。
なんというギャップであろう。

ところで、オーディオを始めた頃から時折感じてきたある感覚がある。
オーディオシステムにも羽化する時があるように思うのである。
稀にしか訪れないセンスなのだが、
そういう変容(メタモルフォーゼ)する多幸感に包まれる瞬間が確かにある。
具体的には多くの機材の集合体であるシステムを部分的に入れ替え、入れ替えしてゆくと、突然グーンと音質が伸びて、出音が安定する局面にぶつかるということだ。この時を私は「システムの羽化」と呼んでいる。羽が生えて飛べるようになった、成体になり成熟した状態というイメージがこめられている。最近、Constellation audio Perseusというフォノをセッティングし終えたときにも、こういう以前の音との良い意味での大きなギャップを感じた。

そうこうするうちに、
私のRe Leaf E1x(E1のXLR入力仕様)のセッティングは定まってきた。
ヘッドホンはDMaaでカスタムされたHD650、電源ケーブルはJorma AC Landa、タップはORB Kamakura、USBケーブルはとりあえずAIM Shieldio UA3(そのうちOrpheusのKholeにしたい)、 再生ソフトは常用としてはKorg Audio Gateとしている。
こうして見ると今までになくシンプルかつ安価な構成となりつつある。

万策堂のオーディオインプレッションでは、ここしばらくはE1xとその周辺機材について連投してきたが、そのシステム構築もほぼ完成に近づいているので、今回でひとまずこのシリーズは最終章としよう。

ところで、このシステムを使っていて改めて思うのは、
E1(E1x)には音以外に良い部分が多いということ。

それはまず大きさである。E1は置き場所を取らない。小さなトランクにいれて持ち運べるほど、小さく薄い。このクラスの実力を持つ機材、例えばOJIのヘッドホンアンプとDACの組み合わせなどを考えると、どちらも単体で既にE1よりも大きいし、厚い。そして重い。性能が同じならば、小さくて軽い方を選ぶ、これはオーディオの鉄則ではないだろうか。
それから縦置きができるというのもいい。置ける場所が狭い場合に大変助かる。これも他のHPAにはない側面である。そういうセッテイングにしても音は平置きとあまり変わらないのが、さらにいい。

それからE1は、その筐体の全体の質感が素晴らしい。何と言っても表面の仕上げが感動的である。非常に細かく滑らかな梨地のような触感で、銀色に鈍く輝くサーフェイス。今日まで様々な機材に触れてきたが、これに匹敵する感触はCHprecisionの機材の表面くらいしか記憶にない。光を吸い込むようなCHPの質感とは全く違うE1の表面仕上げだが、両者とも金属加工技術の粋を集めた仕上げだ。夜な夜な、E1xのトップパネルを素手で撫でてみるのだが、なんとも言えずいい触り心地である。生き物で言えばベーレンパイソンの鱗を想起させるような肌触りだ。

E1が他のヘッドホンアンプと大きく異なるのは、外観がいままでのヘッドホンアンプにないほど贅沢を極めていることである。好き嫌いはあるだろうが、このアンプは実際にインテリア雑誌のグラビアに載るほど洗練された美を持つ機材であり、その美はある種の宝飾品や家具調度品に備わるエレガンスに通じるものがある。もちろんそれは今までの家電にはなかった感覚で、クラシカルなテイストではないし、非常に未来的な感性に由来するものである。また西洋的なものではなく、東洋的なデザイン、余分を排した、簡素で余白を愉しませるような日本独特の意匠を連想させるような形なのである。とはいえE1はデザインという観点から見てもあまりにも先進的であり、常にひとつ先ばかり見ている高感度人たちにとっても容易に受け入れがたい部分がある。だがひとたび、その本質が理解できれば、あまりに高価に見えた価格にも納得でき、そのサウンドが形と表裏一体となって感じられるようにもなる。
やはりヘッドホンの世界にこういう高級感を持ち込んだことはひとつの革新である。E1を作った方々の話の端々に出て来る「家電の方程式を壊す」という言葉が、このような革新として具現化しているのである。

話は少し変わるが、インターフェイスに関して、E1はヘッドホンとの接続としてシングルエンドもバランスも選べるので、どちらの接続が組み合わせるヘッドホンをドライブするのに適切かを、つなぎ変えて試すことが出来る。これはこのクラスのHPAでは重要なことである。このようなマニアックなHPAを買う人間は、多くのヘッドホンをとっかえひっかえして、それら全てを鳴らし切りたいと願うはずである。このように接続が選べるとヘッドホンのポテンシャルを引き出すのに有利だし、少なくともバランス接続だったらどんな音で聞こえるのかを確認できる。ライバルであるGOLDMUND TELOS Headphone amplifier(TELOS HPA)にはそれができない。シングルエンドしか選択できないのである。そのうえTELOS HPAはアナログ入力までシングルエンドしか選べない。接続の柔軟性に欠ける。E1はRCA、XLRどちらのアナログ入力も選べるのである。

さらにTELOS HPAに対するアドバンテージを言うなら、本来はヘッドホンごとに必要なゲイン設定がE1では多くの場合で必要ないことも便利だ。TELOS HPAに限らず、市場にあるほとんどのHPAはこのゲインの問題を抱えている。例えば内部スイッチでしかゲインを変えられないTELOS HPAやNAGRA HD DACは多くのヘッドホンを適正な音量で試すのにあまり向いていない。出音は素晴らしいのに、このようなユーザーフレンドリーの少なさは惜しまれる。

ではRe Leaf E1の音質的長所に話を移そう。
E1の音の良さとして語るべきは多々あるのだが、まず演奏の裏側がよく見えるということは繰り返して言うべき長所だと思う。例えばボーカルがサビの部分を歌って盛り上がっている時だ。普通のヘッドホンアンプで聞くとバックで伴奏している様々な楽器の動きが前面に出ているボーカルにマスクされて聞こえないことが多い。ところが、E1ではそれがまるでバックステージから演奏を覗いているかのようによく聞こえる。ベースが何を演っているのか、コーラスはそれぞれどんな感じで歌っているのか。そういうことが実によく分かって楽しい。こういう愉しみは他のアンプではほぼ得られぬ。音楽の前面に出ていない部分、メインボーカルの背後に隠された旋律やリズムが浮き彫りになる快感はかけがえのないものだ。

E1は左右のチャンネル間のクロストークが他のアンプに比べてとても少ないように感じる。構造的に非常にクロストークが少ないはずのG ride audio GEM-1にさえ勝るとも劣らない。こうなるとステレオイメージが非常に綺麗に出て、定位や各楽器の分離感が安定して出て来る。それにしてもチャンネル間のクロストークは音質上は問題視されるのに、音楽そのものについて言えばクロストークは重要だというのは面白い。同時に演奏している様々な楽器の微妙な掛け合い、駆け引き、煽り合い、すなわちインタープレイは、各パートの間でのクロストークのようなものだからだ。
つまりE1が音質上のクロストークを減らせば、音楽上のクロストークはグッと増えて聞こえる。GONTITIというギターデュオの演奏をE1で聞くと、他のHPAでは決して聞けない二人の微妙な掛け合い、駆け引き、煽り合いが圧倒的な精密さで表現される。これは本当に電源や部屋を含めて数千万クラスのスピーカーシステムでなければ味わえない見事な感覚だ。

それから全ての帯域において、ヘッドホンの振動板に対する働きかけの強さ、ドライブ力の高さが満喫できる。これも他のアンプではなかなか聞けない。例えばSTAXのSR009を中核とする真空管ヘッドホンアンプシステムの音質は総合的に非常に優れているが、こういう点で物足りない。あの音には力強さが足りない。E1にはそういう不満がない。
E1は特に低域を的確にドライブする能力が高く、低域のパワーリニアリティに関してほぼ比類がない。この部分については、今まで最強と考えていたG ride audio GEM-1の能力に匹敵するものがある。それでいてあれほど扱いづらいクセはないのは褒めたい。とにかく、音質の全ての側面でクセみたいなものはほとんど感じない。また中域、高域に関しても音の通りがとても良く、十分な躍動感も得られる。この長所は電源ケーブルを良質なものに変えると、さらに伸びる。
このようなE1を用いたリスニングでは音量をかなり上げても、音は煩くならず、むしろ強いサウンドインパクトに心打たれる事となる。大音量で聞いても疲れそうで疲れず、爽快感が勝って、むしろもっと聞きたくなる。こういう不思議な聞き疲れの少なさはE1のサウンドが私の脳神経回路によく適合するからなのかもしれないが、何にしても驚かされる一面ではある。

このヘッドホンは通常、USBでPCにつないで聞くものだが、PC関係のオーディオの弱点である、実体感の薄さや音のインパクトの弱さがほとんど感じられないのもポイントが高い。聴きようによっては高密度で濃厚な音だが、適度にヌケも良く、温度感もニュートラルで、演出的、作為的な感じもしない。長く付き合えるHPAであろうことが短時間の試聴でも予想できるような音の方向性である。

さらに音像に密度感がありながら、音場としてはとても開放的であり、俯瞰的な聞き方ができるのも面白い。また逆に音の細部にどんどん入り込みたければ、そういう聞き方にも応えてくれる。つまり、どういう聞き方に対しても柔軟に対応し、クラシック、JAZZ、レゲエ、ラップ、ブルース、演歌、クラブミュージック、アニソン・・・どのような種類の音楽に対してもその良さを引き出し、リスナーにくっきりと提示する。様々な意味で死角のないヘッドホンアンプなのである。

ここでハイエンドなヘッドホンシステムとしては、コストパフォーマンスの高いものであることも述べておきたい。このE1のサウンドは経験上は50万円以上の価格の単体のヘッドホンアンプと100万円以上の価格帯のDACを組み合わせてもまず出てこない音であると思う。この音を出すにはインターコネクトや電源ケーブルにも少なくとも50万円以上の投資が必要である。それはコンポーネントの合計だけで200万円以上のシステムとなるが、それでも同等の音が出て来る保証はできかねる。しかもその場合、間違いなくシステムの大きさはE1を中核とした場合の数倍の規模となり、置き場所の面積も必要なコンセントの数も倍増するので相応の電源タップやラック・ボードが必要になり、さらに出費はかさむ。
私の場合、KLIMAX DSとG ride audio GEM-1、そしてインターコネクトにJormaのPRIME、電源ケーブルにJorma AC Landa3本を使い、種々のリケーブルでカスタムしたHD800とかTH900という陣容でヘッドホンサウンドを愉しんでいた時期がある。あの時の機材の総額よりも、今のシステムの方が200万円以上安上がりであるが、現在のシステムの方が明らかに音は良い。GEM-1はかなり個性的だが大変優秀でもあったし、DSのややフラットな出音のつまらなさをよく補って余りあるものだったから、システムの主幹であるGEM-1が劣悪だったという指摘はあたらない。やはりこれは高いレベルでの競争である。この観点からはただE1が優れているとしか言いようがない。

或る人は言った。理屈で押して筋が通り、音を聞いて素晴らしく、それが見事な意匠に包まれている、それが名機というものだと。すなわちE1は名機なのである。

上流の機材に関して言えば、これはUSBの出力がありSSDを使うPCであれば恐らくどれでも同じくいい音が出て来ると予想される。WindowsでもMacでもOK。出音の差はとても少ない。私はWindows7で主にAudio Gate、MacではAudirvanaを使って聞いているが、そのほかfoober2000やAmarra、JRiverなども音がいいと思った。もちろんPCのセッテイングに少し凝ってもみたが、今のところは、そこに凝っても労多くして報われていない。ホントに少ししか音が変わらないのだ。それよりもUSBケーブルに凝ったりしたほうが、まだ報われるのではないかと思い、以前書いたようにUSBケーブルの集中テストまでやったほどだ。

その次に、どうせやるならとデジタルファイル再生に特化したDELA N1A、N1ZのUSB接続、あるいはUSBトランスポートにほぼ特化したAurender S10あたりまで試したくなってきた。そしてついに各方面のご厚意により、それらをE1でほぼ同時に比較できるというワガママな試聴が実現した。

今回聞いたDELA N1A、N1Zは当初はネットワークオーディオ専用の超高級NASとしてデビューしたものだが、2014年末ごろから、もう一つの機能、すなわちUSB-DACとの接続ができるように中身が整ってきた。この機能に関するレビューはネット上には未だ少ない。また同時に聞いたAurenderのS10はUSBを中心としたデジタル出力に特化したトランスポートとしてデビューし、海外での評価は高い。だがN1Z以上に、日本ではレビューがとても少ない。上位機のW20はS10より音が良いが対費用効果は低く、クロックを入れるつもりがないならS10の方を取るべきだろうと考え、あえてミドルレンジのS10を試聴した。
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まず実際にN1AとRe leaf E1をUSB接続してみると、動作は完璧で安定している。ただし、不満がなくはない。これはiPadに入れた専用ソフトウエアでネットワークを介して操作するのだが、残念にも洗練された汎用のUpnp/DLNA準拠ソフトウエアではない。そのせいか表示のレイアウトや階層、つまり画面のデザインが見やすいものではない。そもそもDELAのN1シリーズは本来はNASであって、USBトランスポート機能はオマケ的な能力であることを思い知らされることになった。
そして音質。なんとN1AのUSB出力での出音は普通のPCのそれとほとんど変わらなかった。再生ソフトを選べば、N1Aの音質を超えることも不可能に聞こえない。
次にN1ZのUSB出力を試すと、これは流石に静寂感が高く、音の目鼻立ちもクッキリしてくる。なかなか好印象である。しかしこの音は、例えばPCにインストールしたJriverでの再生音と比べて大幅に上と言い切れるか?さらにN1Zの値段を考えるとどうか?冷静になって思い巡らせてみると、なかなか難しいと思う。ヘッドホンで聞くと、スピーカーで聞くよりもずっと機材の素顔が良く見えることがあるが、こうして聞くN1Zはどこか無機質な音でもある。音楽を徹底的に音として扱う態度が垣間見える。非常に真面目でスクエアなサウンドであり、極めて高音質だが音楽性が欠落して聞こえる。やはり音の面でもDELAのN1シリーズはNASとして使うのが本来なのかもしれない。
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最後に、Aurender S10をE1に接続して聞いてみた。
まず、iPadにインストールした専用ソフトウェアだが、操作性は良好である。反応は十分に速く、またリストの表示も見やすい。ただこうなると、こういう使いやすいソフトウェアがいつまで使えるのかが気になってくる。例えばiPadにも寿命がある。電池は3年持つと聞くが、その頃に電池を専門業者で入れ替えてもらうべきか、それとも新しいiPadを買うべきか?そしてその新しいiPadにAurender S10を操作するソフトウェアはインストールできるのか?またS10のHDDやSSDはいつまで持つのか?壊れた時に既に同じ規格のHDDやSSDは時代遅れになり、入手しにくい可能性もある。全ては、その時点になってみなくては分からない。さらにS10やW20にはそれ自体にその機能すべてを操作できるボタンはついていない(一部の操作は可能)ので、iPadがなんらかの形で利用できなくなれば、ジャンクにしかならなくなってしまう。さらに、短いサイクルでのモデルチェンジもありうる。つまり、この分野の製品は先の見通しが立てにくい。それを承知で100万円近い代金をこの機材に支払っていいのかどうか。

とはいえ、その音には期待以上の凄味があった。録音された場の空気感の出方がにわかには信じられないほど生々しい。これはDSP-01から出て来る音に近い。これはDSP-01を使わず、あのリアルサウンドに肉薄することができる一つの方法だろう。それから音場の広さ、その音の余裕度が半端なく大きく感じる。このサウンドの凄味は一体なんなのだろう。やはりこれは電源がしっかりしているからこそ出てくるニュアンスなのだろうか。だが必ずしもE1との相性がいいとは思わない。E1はPCとの組み合わせで音決めされており、N1ZやS10との接続は開発時には想定されていなかった。そのせいか音が場合によっては鋭利すぎ、キレすぎて疲れる場合もあった。E1の良さがS10の過剰な生々しさによって削られたような節がある。正直、このユニークな音には思わず聞き入ってしまうのだが、一方でこういう音楽性の少ないサウンド、凄味一辺倒の音のセンスにつきあい切れないという人が居てもおかしくない。

いろいろな見方はできるが、ごく客観的な視点からはS10とE1のコンビネーションの音は、私が今のところE1から聞いた中では、ベストなサウンドだろう。もう、これほどの音質となれば、スピーカーオーディオと比較してさえ、コストパフォーマンスは高い。
先日、私はTELOS HPAの音をある人と一緒に聞いた。
彼はヘッドホンを外すと、この音をオープンな空間に放り出せるスピーカーシステムを部屋含めて揃えようとすれば少なくとも1000万円以上はかかるだろうと言って溜息をついたのが印象に残っている。
それと同じことが巧くセッテイングされたRe leaf E1にも言えると思う。実際、300万円のヘッドホンシステムを揃えるなら小規模ながら充実したスピーカーシステムを揃えた方がいいという意見はよくある。私もTELOS HPA、E1の登場前まではその意見に賛成であった。しかしこれらの極めてハイエンド志向のヘッドホン専用機材の登場により、スピーカーオーディオの音質上の優位性は絶対的なものではなくなった。

ただ、N1ZやS10等の前段機器を使うと、音以外の点で、私がヘッドホンオーディオに設けた枠から、音質以外の点でハミ出すところがあるのは事実だ。今回、私がE1を導入したのは、そのコンパクトでさりげない佇まいを評価したからである。N1ZやS10、あるいはさらに進んでAurender W20にSforzatoやAbendrotのクロックを繋いだセットをE1に組み合わせることは音質には間違いなく効くだろう。しかし、小規模で、いざとなればパッと持ち出せるような、小さい据え置きヘッドホンシステムを求めた当初の精神は大きく損なわれる。そもそもPCオーディオの始まりは安価でコンパクト、シンプルだが、重厚長大型のオーディオシステムに匹敵する音質というところだったはず。高音質を求めるあまり、その初心を忘れたような機材がハイエンドオーディオ市場に多く有る。今回の企画にしても、大きさの制約がないなら、初めからOJIのヘッドホンアンプとSforzato DSP-01で良かったのではないか。我々は自分が思っている以上に欲張りな存在であり、音が良ければ全て良いと言い切れるほどオーディオは単純ではない。
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他方で、そういうUSBトランスポートに凝る事とは別な方向性もある。
それはPCの再生ソフトに凝るという方法だ。
先述したがAudio Gate、Audirvana、foober2000、Amarra、JRiverなどで聞いているとそれぞれ随分と音の印象が違う。特にクリアでHiFiな音という意味ではJriverなどは群を抜いて優れている。これを使うと、上記のN1ZやS10で得られる音質と全く同等ではないにしろ、ほぼ遜色ない音が出て来る。価格差を考えると大変にお得である。ただし私個人はどうもJriverのサウンドが気に入らない節もある。綺麗過ぎてどこか嘘の匂いがする。私個人は、もっと地味で、もっとカチッとした音のするAudio Gateが何故か好きだ。DSDが使えればいいというものではないし、音質はただ優秀であればいいというものでもない。音全体の印象が自分の好みに合うかどうかも大事だ。
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ともあれ、こうして試行錯誤しながらセッティングを詰めてゆくとE1のサウンドは予想以上に精緻であり、絶賛するしかできないことが明らかになってくる。
今や私のE1xはその全貌を露わにし、完全態に近づいて来たのではないだろうか。

オーディオファイルというものは手持ちのシステムにおいて、メイン機材を入れ替えると、そのセッティングを決めるのにとても熱心になる場合が多い。急いては事を仕損じるというから、私に場合、まずは悠々と時間をかけて音質の変化を確認しながらセッテイングを煮詰めてゆく。しかし、それが遅々として進まないと機材の音の旬を逃してしまう気もしてくる。気分が盛り上がっている時に聞く、新しい機材の青臭い音というのはまた格別で、エージングどーのこーの言う以前にスリリングな音の冒険なのだ。やるときはドンドンと機材を取り換えて、急いでやることも楽しい。別な視点から見れば人生はそれほど長いとも言い切れない。明日のことは分からないというのが真実だ。今は工面出来ているカネも明日からは続かないかもしれない。
だから今を大事にする。
これが彼の人の言う、悠々として急げ、というやつなのだろう。
このような、どこか矛盾した試行錯誤の果てに
E1xを中核とする私のサブシステムは羽化しつつあると言えそうだ。

by pansakuu | 2015-07-11 08:42 | オーディオ機器