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RE・LEAF E1 ヘッドホンアンプの私的レビュー: 天秤の片方

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天秤は負けた(軽い)方が上がるんですよ。
それっておもしれぇなぁって思って。
藤原基央(BUMP OF CHICKEN)



Introduction

ひとつのモノを選ぼうとする時、
私は必ず、頭の中に一基の天秤を置く。

天秤の片方に買おうとするモノを置き、
もう片方にそれと比較対象になりそうな別なモノを載せる。
どうやっても私が選ぼうとしている、そのモノの方が重く、
どんな他のモノを対抗馬として持ってきても釣り合いそうもないと踏んだとき、
万を持して購入に踏み切る。

GOLDMUNDのTelos headphone amplifierの事を考えるにしても、
この習慣は当然変えないわけで、
なにか、釣り合いそうなモノを常に物色して比較するという思考実験が
絶え間なく私の中で繰り返されている。

今回、取り上げるRE・LEAF E1というヘッドホンアンプを聞いた私の第一印象は、
これは既に聞いたことがある音だ、というものだった。
日本人の作った高級なオーディオ機器によく聞かれる傾向が感じられた。
既存の強力なDACと日本製のハイエンドなHPA、
例えばOJIやマス工房の高級なHPAとを組み合わせるならば
なんとか出せる音だと踏んだのだ。
その瞬間に限ればE1は私にとって無価値なアンプであったと告白する。

たが、RE・LEAF E1を振り返ってみると、そのシンプルさと、コンパクトネスには目を見張るものがあると気付く。その音の端正なまとまりの良さも得難い。なんと、この単行本ほどの大きさの機械にノートパソコンとヘッドホンを結線するだけで、これほど正確かつ明快で整った音が手に入る。
そう考えているうちに、いま一度、聞きこんでみたくなったのである。

かくして私は、E1と再度、そして再再度、再再々度と対峙することになった。
驚くべきことにE1は試聴のたびにその外観と内容を変化させてきた。
音も当然変わってきた。
ライバルであるTelos HPAが仕様を全く変化させないのと対照的であった。
2014秋のヘッドホン祭りで聞いたE1の音と2015年3月8日に聞いた音とは、かなり異なる。
このレビューは、3月8日に聞いたおそらく最終仕様と思われる個体から得た情報をもとに書いている。
(写真はメーカー様のHPから拝借しております。)


Exterior and feeling

RE・LEAF E1は先述のとおり、単行本くらいの大きさの平置きの四角いアンプである。
表面仕上げは非常に美しい光沢のある梨地仕上げで、ずっと撫でていたいほど手触りがよい。こういう感触のある表面仕上げはオーディオでは初めてであるし、これが底面だろうが表だろうが、何処を触っても味わえる。この仕上げは2014年の秋のヘッドホン祭りの時と2015年3月の最終仕様とは明らかに異なる。使っている金属の種類もわずかに異なるらしい。またコーナーにつけられているアールの仕上げも非常に美しい。
一見してただシンプルなデザインと映るが、ありえないほどガワにカネがかかっている。いままで見てきた多くのオーディオ機器の中でもトップクラスに外見にカネをかけている。ただ外観にこだわりすぎて、素人には分かりにくいほどになってしまったのが問題かもしれない。最新のロットではフォーミュラーワンの部品製造を担当する日本の工場に筐体を発注しているらしい。
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このアンプのフロントパネルは狭い。右端には、3つの低い突起がある。これは電源スイッチボタンである。3つのポイントに分かれているが、これは実は一個のボタンである。どれを押しても同じで、同時に二つ三つ押してもよい。その隣には、溝もなにも刻まれていない単純な円筒形のボリュウムノブを触れる。さらに隣には電源やロック状態を示すLEDランプがある。ここでボリュウムノブの感触は滑らかである。悪くない。ベアリングなどは組み込まれていないらしいが。なお、このノブには溝や印はない。
残りは丸く彫り込まれて少し奥まった場所にあるバランス・シングル兼用のコンボタイプヘッドホンジャックが二つ。それだけである。筐体のトップパネルにはなにもない。四隅にアールがつけられているだけ。サイドパネルにもなにもついていない。底面を除けばネジの頭は全く見えず、全体にのっぺりしたデザイン、良く言ってもアノニマスなデザインである。この2ピースの筐体そのものにRE・LEAF のロゴすらない。3つの突起に分かれた珍しいボタンぐらいが目を引くポイントだろうか。驚くのは最終仕様のE1には、どこを見てもネジの頭がないことだ。ノブにすらない。この機材は裏表がない。どうやって組んでいるのか分からないが、その点は見事だ。

あくまで私見に過ぎないが、この筐体全体のデザインはシンプルすぎる。このHPAはメーカーの処女作であり、そこに2ピースのアルミ削り出しの筐体まで奢ったのだから、もっとアイコン的な、印象に残るデザインが欲しい。どこかに小さくRE・LEAF のロゴが彫刻されていたら、少しは救われたかもしれない。
ただ、最終版ではパネルの一部にレーザー印刷でRe leaf E1 Made in Japanとだけ刻印される。
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リアにはステレオミニとRCA一系統のアナログラインアウトとイン、そしてBタイプのUSB入力がやはり丸く彫り込まれて少し奥まった場所に認められる。RCA入力は特注でXLR端子に換えられるが、10万円割り増しになる。また、USB2.0に準拠したデジタル入力は2.8MHzまでのDSD(Dop)と24bit/192kHzまでのPCMに対応するとされる。またアナログラインアウトとインをXLRに換えたものは特殊仕様でE1xと呼ばれる。
なお、ステレオミニの端子も特設したことは注目してよい。他の高級HPAでこのような端子を持つものはとても少ない。カスタムIEMなどを試してみたくなる。

このアンプの中身は御存知のようにDACつきのヘッドホンアンプという流行のスタイルである。DAC部はTIの高級チップPCM1792Aを使用している。また業界初の1ppm/℃偏差電源供給による高精度なアナログ変換をメーカー側は謳ってもいる。電源は4重の安定化電源を小さな筐体の中に収め、ピュアで力強い音を目指したとか。さらにアンプ部はレアな電流駆動方式である。この方式の面白いところは、その特徴的なソフトでハイスピードな音質もさることながら、そもそもゲインという概念がないということだ。いつもHPAで悩まされている、ヘッドホンごとの能率の違いによるゲイン調節の必要性から解放される。多くのヘッドホンを試す私のような者にとって、ゲイン調整のついていないHPAは使いにくいのだが、思わぬ形でこの問題を解決したのが、E1なのである。
内部の写真を見せて頂いたが、非常に厚く重たい回路基板上にギッシリとデバイスが実装されている。まるで拡大された集積回路のような印象であった。様々な機材の中身を見てきたが、こういう中身には出会ったことがない。裏にも表にも部品が配置されているがコンデンサーらしいものがほぼ見えないのも特徴かもしれない。これを手作業で作るとなると、かなりの労力だろう。とにかく最短距離で配線を済ませるべく努力しているようにも見えた。シグナルパスを短くすることで音の鮮度を上げようというのか。

メーカー側で提案している先端の材質を変えられるスパイクコーンKatana-sp1についてだが最終仕様として出された、このスパイクコーンの作りは相当に気合が入っていた。軟鉄の基部にねじ込み式の先端部が二種付属する。一つはダイス鋼に焼き入れし、先端部を鏡面R加工したもの。もう一つは同じ加工がされた真鍮製のものだ。これを特殊なゲルシートを介して筐体の下面に貼りつけるような形になっている。オーナーは好みの音になる先端を選べばよい。スパイク受けは、先端部の形に合わせたくぼみを掘り、確実な点接点が得られるようにしてある。スパイク受けの設地面は、設置される場所にキズがつくのを防ぐためにわざわざ鏡面加工している。価格は3個で20万円。本体と同時購入なら15万円である。

いろいろオーディオ機器を売り買いして思うのは、手元に長く残る機材は音以外のメリットが必ずある。E1に関しては、外観の仕上げがありえないほど素晴らしいこと、どんなヘッドホンでもゲイン調整なしでつなげること、バランス接続もシングルエンド接続も試せること、同クラスの音を出すOJIやGoldmundの機材に比して圧倒的に小さいことなど、出音以外の長所が多い。それらの意味でも長く付き合える機材だと確信する。

The sound 

音の方もほとんど隙がなく、突き詰められたものだ。
ここまで様々なヘッドホンアンプの音を聞いてきているが、GOLDMUNDのTELOS HPAに匹敵しうるのは、このアンプの音だけであった。そして、それらの比較の結果を先に言えば、E1の音の傾向はTELOSのそれとは異なるので個人の好みで選べばよい。TELOSは星をいくつか持つフレンチレストランのフルコースディナーの味であり、E1は同じく星を獲得している銀座の寿司屋で御大将がおまかせで握る寿司の味ということになろうか。

シングルエンドのみのTELOS HPAとの公正な比較のため、シングルエンド接続を選択して、無改造のHD800で聞いたうえ、フルテックなバランスケーブルでリケーブルし、バランス仕様のHD800も聞いた。この状態でのRE・LEAF E1の全体的な音の印象は、真面目で端正であり、クリアであり、RE・LEAFの担当の方が強調していたようにピュアであるということだ。これは日本のエンジニアが最も得意とする方向性に振られた音であり、典型的なジャパンハイエンドサウンドである。明るく、明瞭な音が全ての帯域での均等に解像度を示すのである。独特の癖が少なく、欠点を指摘するのが難しい優秀な出音である。

このアンプの特徴として、弱音の広がり、余韻の正確さがある。TELOS HPAではこの辺が美的に演出されて、美音系のサウンドに傾くが、E1では正確な音が得られる。
試聴曲の中に鬼塚ちひろの昔の有名曲「月光」があって繰り返し聞いていたのだが、彼女のボーカルの音像が消える際の余韻の漂いが、いい意味で美麗とは言えないのに驚く。微妙だが明らかに人工的に響くのである。事実、このリバーブは人工のものであったろうと信じるに足るような音の出方とでも言おうか。このアンプの音には、なにか感情移入なしに非常に冷静に音楽を見つめて、測っているような雰囲気がある。音の加工感がとても少ない。素材の音を大事にする。しかし音に対して仕事はする。まるで老舗の寿司屋のようなアンプなのである。ただ、一面としてそういうモニター的な音は、音楽の躍動が削がれてしまい、つまらない音になりやすい。音が全然跳ねなくなってしまうのである。だがE1にはそういう恨みが何故か無い。表現するとすれば、音は「キチッと」躍動する。躍動すると言ってもあくまで真面目に折り目正しく躍動するということだ。G ride audio GEM-1のように野獣のようなリミッターが外れた音、聞く人によってはハチャメチャにさえ聞こえる音にまでは決して傾かない。この絶妙な匙加減、過不足のなさ、優れたバランス感覚がこのアンプの音質のキモの部分であろう。
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旨いフランス料理とは火を通して新鮮、手をかけて自然な料理だと聞く。対する日本の寿司はそういう加工をできるだけ行わずに、必要最低限の加工で食材の味を引き立たせるものだと聞いている。料理において火を通したり、手をかけることは、オーディオにおいては素晴らしい音を演出する行為に相当しており、これはTELOS HPAの内部で行われている複雑な過程である。他方、E1では寿司を作るように、信号にできるだけ触らない、必要最低限の加工のみで、なるだけピュアな音の形を伝えようとする。

このアンプは音の拡大鏡としては第一級の性能を誇る。非常に細かい音を拾ってくる。そこでは当然、音の大きさの差異、音の前後関係、重なりの度合、音色・音触の微妙な違いが完璧につけられている。あらゆる意味で音の分離が良い。こうなると細部にわたる音の起伏・凹凸も立体的にかなり高いレベルで見えてくる。現代ハイエンドオーディオのテーマである、音楽を視覚的に鑑賞するという態度がここに現れる。
逆に言えば、木を見て森を見ない傾向がやはりある。しかし、それが凡百のアンプのように違和感になったり、欠点として感じられることがない。実は一本の木の中に森全体を理解する秘密が隠されているのではないかと思うほど、ディテールに没頭する快感を与えてくれるHPAである。

また、このアンプは先述のとおり電流駆動方式である。私個人は通常その手のアンプに聞かれやすい、ハイスピードかつ柔らかい音調が聞けるだろうと予想したが、なぜか裏切られた。
このアンプの音調は私にはむしろやや硬めに聞こえる。英語で真面目な人、堅物のことをSquare(スクエア)と呼ぶことがあるが、全体の音調としても、そんなSquareな印象を持った。単純に硬い音ではないが、Telos HPAの持つ女性的なふくよかさとは対照的である。E1の音に備わった痛さを感じない程度の絶妙な硬さというか真面目さは、このアンプの冷静さの証と私は受け取っている。

どことなく硬めなSquareな音とは言っても、E1によるヘッドホンリスニングでは、いわゆる「サ行が刺さる」というような聞き疲れが他のヘッドホンアンプよりも少ないと思う。耳への負担の軽減度はTELOS HPAと同等だ。TELOSでは、どのムンドのアンプも持っている独特のふくよかさ、そこから来る聞き心地の良さが表れているふしがある。ただしTELOS HPAはE1に比べて低域の量感がやや少なく感じられることがあるのと、楽器によって高域がヒステリックに、きつく響くことがある点は弱点として覚えておいてもいいと思う。なにかある種のデジタルアンプに聞かれたような音調がTELOSにはある。

それからE1では全ての帯域において、ヘッドホンの振動板に対する働きかけの強さ、ドライブ力の高さが満喫できる。特に低域のドライビングパワーは素晴らしく、これについては最強と考えていたG ride audio GEM-1に匹敵するものがある。それでいてあれほど扱いづらいクセはない。いや、クセみたいなものはほとんどない。中域、高域に関しても音の通りがとても良く、十分な躍動感が得られる。

こうしてE1においてはヘッドホンの鳴りの良さも特徴なのだが、ある種のHPAに聞かれるようなスピーカーを聞いているような感覚を催す音までは普通は出ないようだ。(Master1は例外)むしろ細部へ注がれるまなざしの確かさのために、このドライブ能力があるような気がしてならない。音圧でバーンと音を押し出し拡散させるのではなく、音の全てのディテールに音圧が沁み渡るように、次第に圧力をかけているかのように聞こえる。
さらにE1では音の細かな動きに合わせて、音圧を調整しながら出してゆくようなところがある。F1マシンに搭載される技術の一つに路面状況に合わせてサスペンションのダンパーの油圧を能動的に変化させるアクティブサスペンションというものがあるが、そういう能動的な調節機構が作動しているような、非常によく制動の効いた音がHD800から聞かれた。

音のスケール感はOJIやLuxmanなどの標準的なハイエンドヘッドホンアンプと同等である。シングルエンド接続の状態では明らかにTELOS HPAの方が音場が広い。ムンドのアンプに比べると量感にもやや乏しく、豊かというよりはスレンダーでスマートな音であると聞けた。一方、バランス接続した場合には音場は広がってくる。低域は明らかに豊かさを増し、音場の透明度が増す。これは最終仕様の印象であるが、はじめのバージョンでは、もっと低域が痩せていて、音場の透明感も低かったように思う。、E1は進化しているのである。

最新の試聴ではバランス接続のみで聞いているのだが、基本的な音質の印象は変えないまま、さらに強固にヘッドホンの振動板を掴んで自在に振動させられるようになったと感じたし、先述のように音質全体も深まったと思った。音に余裕ができ、何層もの音質の層が深く深く眼下に広がるような印象、透明度が高く深い湖の最深部を覗き込むような印象がある。制動がさらに巧く効くようになり、音が締まって精悍に聞こえる。シングルエンドでもE1の良さは十分に満喫できるが、やはりバランス接続で聞いた方が音はいい。DSDもハイレゾも、この接続により真価が発揮されるように聞こえた。

試みにバランス接続でSONY MDR-Z7を接続して聞いてみたが、驚いた。MDR-Z7はアンプを奢れば奢るほど、その潜在能力を発揮するヘッドホンであるのは知っていたが、これほどとは。E1ほどのアンプに接続して聞く機会はあまりないのだろうが、やってみると部分的にだがHD800やTH900を超えるような音を聞かせた。うまく言えないが私個人の印象ではTH900とHD800を足して2で割ったような音に近い。とにかく5万円のヘッドホンの音ではない。やはりE1のヘッドホン駆動能力は大変高い。

E1の音は真面目な音と言い続けているのだが、別な言い方をすれば音楽のドライブ感だけでなく、音がコントロールされ正確に出る側面も強いということだ。こういう音調の場合は音楽のジャンルごとの得手不得手はないものだが、他方、もともと録音が悪いものを、アンプの持つ音楽性とか、演出で聞こえを良くしてくれるような側面もないので困る。だが、このアンプの音はマス工房のアンプのような強く抑制の効いたフラットそのものの音調とも異なるので、音質が酷くても聞けないほどにはならない。作曲や歌詞が持つ面白さが、それこそ真面目に提示されるから音質にそれほど左右はされないと思う。

こうしてE1の音質的長所は多々あるが、音楽の裏がよく見えるということは特筆しておくべきだと思う。例えばボーカルがサビの部分を歌って盛り上がっている時に、普通のヘッドホンアンプで聞くとバックで伴奏している様々な楽器の動きが前面に出ているボーカルにマスクされて、よく聞こえないことが多い。ところが、E1ではそれがまるでバックステージから音楽を覗いているかのようによく見える。ベースが何を演っているのか、コーラスはそれぞれどんな感じで歌っているのか。そういうことが実によく分かって楽しい。こういう愉しみは他のアンプではなかなか得られない。

さらに、このヘッドホンは通常はUSBでPCにつないで聞くものだが、PC関係のオーディオの弱点である、音数は多いが実態感の薄さや音のインパクトの弱さがほとんど感じられないのもポイントが高い。高密度で濃厚な音だが、適当にヌケも良く、温度感もニュートラルで、演出的、作為的な感じがしない。

こうして聞いていると、このヘッドホンアンプには、どのようなヘッドホンをつないでも、そのヘッドホンのポテンシャルを100%引き出す能力が備わっているような気がする。例えばMDR-Z7がこれほどの音を出せることを知っている人はほとんどいないはずだ。おそらくどんなヘッドホンをつないでも、こういう驚きがあるだろう。しかもゲインを気にする必要がない。素晴らしい。これから代表的なヘッドホンをズラッと用意して、次々に聞き直すという試聴をやってみようと思っている。
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Summary

ヘッドホンとは、いわゆるサブカルチャー的なアイテムだと私は常々思ってきた。
つまりオーディオにおいては、スピーカーオーディオというメインカルチャーがあり、その軒下にある隙間を埋めるような形でヘッドホンオーディオというサブカルチャーがあるのだ。
一方、日本にはオタク文化という言い方もある。オタクそのものがサブカルと同一視されている場合もあるが、実はそれらは違うものだ。オタクとサブカルの違うところは主流に対するマイノリティとしての反抗の姿勢があるかないかだろう。オタクの方には反抗心などない。ひたすらに自分の中にある衝動に従い心地よさを追求する。その過程で、どこか他人に理解されない“痛さ”を孕むのだ。私に言わせれば高級イヤホン派は今のところまだオタクに分類されるのだろう。
だがハイエンドヘッドホンにはスピーカーオーディオに対抗する敵愾心をどこかに感じることがある。だから私の中ではサブカル的な立ち位置なのだ。サブカルはメインカルチャーに対抗し反駁するものだからだ。
とはいえ、ハンデ付きでもスピーカーオーディオとまともに勝負できるヘッドホンもアンプはとても少なかった、というか最近まではほぼなかった。
だが2014年、TELOS HPAそしてこのE1の登場とともに、ささやかではあるが、サブカル的なヘッドホンの矜持を、オーディオ界のメインカルチャーであるスピーカーに対して示せるようになってきた。そのかわり、その価格はこのサブカルを担うマイノリティたちには辛いものとなってしまった。これは明らかにメインカルチャーの側、すなわちハイエンドなスピーカーオーディオを追求できる人のための価格設定である。そういう風に考えると、TELOS HPAもE1とても中途半端な存在だ。これらは、ほとんどのヘッドフォニアの手に届かないところにある武器だからだ。でも、これ位の実力がなければスピーカーオーディオとやりあうことはできない。なんとも皮肉だ。

これほどコンパクトでシンプルな筐体から、このように完成度の高い音がいとも簡単に出て来ること。これは驚き以外なにものでもない。デザインに残念な部分はあるにしろ、このアンプの価値は他のほとんどのオーディオメーカーのHPAのそれをかなり引き離しているのは間違いない。特に、小さくなって音が良くなるというのはスゴいことだ。これはヘッドホンの世界から突き抜けている、二つのピークのうちの一つであろう。そして製品の内容や円安・内外価格差を考えたとき、RE・LEAF E1はTELOS HPAよりもコストパフォーマンスが高いという判断もできる。ただ、TELOS HPAにはそこにしかない隔絶した音世界があり、それを手に入れることは魅力として残る。特にオペラや女性ボーカルの表現の素晴らしさはE1に勝る。空間表現も凄まじい。だがE1はTelos HPAよりもオールラウンダーであり、より多くのジャンルを等しく扱える。例えば1960年代のJAZZの録音などは、Telosがあまり得意としないところだが、E1なら平気である。また、E1の音像の、細かく、うるささを微塵も感じない実在感や、音場の何とも言えない透明感はムンドにはない。よく聞き比べて、どちらかを選ぶか、両方を取るか、あるいはその金額をスピーカーオーディオにつぎ込むか。いろいろと考えさせられる。

E1の能力は大変奥深い。聞いても聞いてもそのサウンドの新しい側面が聞こえてくるようなところがある。他のヘッドホンアンプにこういう感覚を感じた覚えはない。これだけ聞いてきたのに、こういうものには出会ったことがないというのは不思議だ。このアンプの本性、あるいはヘッドホンオーディオの最深部を知るには、これを買って、長く手元に置いて試す他はない。確かにプライスタグは高い。値上げ幅も大きい。だがその価値はある。この最終仕様の外観と音ならば。もしかするとE1はヘッドホンアンプの終着駅のひとつなのかもしれない。

ごく最近まではTelos HPAを買う事をほぼ決めていたのであるが、3月8日にこの2台を一対一で比較してみると、そう簡単には行かないなと思うようになった。随分と改良されたうえ、二日も連続でデモされて、音がこなれたのか、最終日のE1は随所でTELOS HPAを上回る実力を聞かせた。
今日までで、私はTELOSを4回、別々な機会で試聴した。そしてE1を3回、別々な場所で聞いた。
こんなにこの二つのアンプを真剣に聞き比べた者は私以外にはいないだろう。
そう自負できるまでになった。

ひとつのモノを選ぼうとする時、
私は頭の中に一基の天秤を置く習慣がある。
今はTELOS headphone amplifierを載せた傾いた天秤を思い浮かべる。
もう片方の天秤皿に、RE・LEAF E1を載せる。
案の定、天秤は音もなく動き始める。
それらはやがて釣り合い、さらに・・・・・・・・。
かくして見えない天秤のバランスは逆転し、
私はE1xを発注した。

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by pansakuu | 2014-12-24 20:34 | オーディオ機器